インド南部タミルナドゥ州で、キリスト教徒の父親と息子が警察に逮捕された後、勾留中に暴行を受け死亡する事件が発生した。「インドのジョージ・フロイド事件」として、地元では警察を批判する声が上がり、ストライキや抗議デモが行われ、事件に関わった警官2人が殺人容疑で逮捕される事態になっている。
カトリック系の「アジア・ニュース」(英語)によると、事件が発生したのは同州南部の港町トゥーットゥックディで6月19日に発生。ジェヤラージさん(52)と息子のフェニックスさん(31)は電話店を営んでいたが、新型コロナウイルスにより規制されていた営業時間を超過して営業を続けたとして逮捕された。2人はプロテスタントの信者で、タミル人のカースト「ナダール」に属していた。ナダールは法的には恵まれた立場にはないが、政治的、社会的には一定の重みを持つ階級だという。
遺族によると、2人は22日に病院に搬送され、フェニックスさんはその日の夜に、ジェヤラージさんは翌日に亡くなった。
タミルナドゥ州政府は、この事件について調査を始め、事件に関わった警部補2人を含む警官4人は停職処分となった。一方、4人のうち1人は「ナダール」と敵対的関係にあるカーストに所属しており、そうしたカーストの違いも犯行の可能性の一つとして指摘されている。
インド・カトリック司教協議会会長のオズワルド・グラシアス枢機卿はコメントを発表し、「市民を守るべき人々からこのような暴力は容認できない。正義が行われ、有罪者を処罰する必要があります」と非難。インド・カトリック正義と平和協議会前事務局長のニシヤ・サガヤマ神父(フランシスコ会)は、今回の出来事は、インドにとって、またその文化、社会にとって最悪のものであり、「私たちの社会の倫理、個人の倫理、人への接し方、インドの法制度のすべてが問題となっている」と語った。
インドのニュースサイト「インディア・ドットコム」(英語)によると、インドの中央調査局は1日、この事件の捜査に取り掛かり、警部補の2人を殺人容疑で逮捕した。