オーストラリアのニューサウスウェールズ州警察は5日、国際的なメガチャーチであるヒルソング教会のブライアン・ヒューストン主任牧師(67)を、児童性的虐待に関する情報を隠蔽(いんぺい)した容疑で起訴したと発表した。ブライアン牧師はこの問題について常に透明性を保ってきたとし、起訴されたことは「ショック」だとしつつも、「断固として無罪を主張」すると述べた。
警察の発表(英語)によると、この容疑をめぐる捜査は2019年から始まった。広範囲な捜査の後、証拠の概要を確認するよう検察庁に要請。8月頭に検察庁から助言と追加の照会があり、5日午後2時ごろ、ブライアン牧師の法定代理人に出廷通知を送達したという。
これを受け、ヒルソング教会は6日、声明(英語)を発表。ブライアン牧師は声明の中で、「今回の起訴は、私がこの件に関して常に透明性を保ってきたことを考えるとショックです。私は断固として無実を主張し、これらの訴えに反論します。また、記録を正すことのできるこの機会を歓迎します」と述べた。
この問題は、ブライアン牧師の父親で牧師であった故フランク・ヒューストン氏が1970年代に、未成年者に対し性的虐待を行っていたことをめぐるもの。ヒルソング教会は声明で次のように述べている。
「この容疑は、何年も前にブライアン牧師が父親の行為を知ったときのものです。教会は、父親のフランク氏について常にオープンで透明性の高い対応をしてきましたし、ブライアン牧師もこの20年間、何度も皆さんと痛みを分かち合ってきました。ご存じのように、この問題は2014年の王立委員会以来継続しており、メディアの報道は大きな憶測を呼ぶものでしたが、そのほとんどは扇動的で、多くは不正確なものでした」
ヒルソング教会はまた、米キリスト教メディア「クリスチャンポスト」(英語)に寄せた声明で、「ブライアン牧師が起訴されたことに失望しており、彼の権利である推定無罪と法の適切な手続きが与えられることを求めます」とコメント。その上で、「ブライアン牧師は、この問題に反論し、汚名を晴らすことを楽しみにしていると私たちに伝えました。現在、この問題は係争中の事案であるため、ブライアン牧師とヒルソング教会はこれ以上の声明を出すことはありません」とした。
オーストラリアでは国内の児童性的虐待をめぐって2013年に王立委員会が設置され、5年にわたる広範囲な調査が行われてきた。クリスチャンポストによると、ブライアン牧師は14年に王立委員会の調査に応じた際、父親が性的虐待の被害者の男性に1万ドル(約110万円)の賠償金を支払っていたことは何も知らなかったと否定。父親の虐待行為を知って「完全に打ちのめされました」と語り、「自分が尊敬していた人物が、自分が思っていた人物ではなかったという事実を受け入れなければなりませんでした」と述べていた。
王立委員会は5年間で、教会や学校、スポーツクラブなどの施設や組織で虐待を受けたという被害者から8千件以上の証言を聞き取り、17年末に最終報告書(英語)を発表した。最終報告書によると、17年5月末時点までに6875件の聞き取りを実施し、このうち宗教施設で虐待を受けたとする報告は4029件と全体の6割近くに及んだ。最も多かったのは、2489件のカトリック教会で、宗教施設における虐待報告の3分の2、虐待報告全体の3分の1を占めた。次に多かったのは聖公会で594件、その次が救世軍で294件だった。
ヒルソング教会が所属していた「オーストラリア・キリスト教会」(ACC)を含むペンテコステ派の諸教会は37件。フランク氏が性的虐待を行っていたことを教会側に初めて認めたのは1999年で、ブライアン牧師は当時、ACCの前身である「オーストラリア・アッセンブリーズ・オブ・ゴッド教団」(AOGA)の会長を務めていた。最終報告書の宗教施設に関する部(英語)では、ケーススタディーとして、フランク氏の事例を次のように取り上げている。
ある主任牧師に対する児童性的虐待の申し立てへのAOGAの対応を検討した結果、AOGAの会長が自身の父親に対する申し立てを処理する責任を負っていた際に利益相反があったことが判明した。AOGAの役員はこの利益相反を認識し、対応することができなかった。また、法律で定められているように、疑惑を警察に報告したり、懲戒手続きを州当局に報告したりしなかった。
警察の発表によると、ブライアン牧師は10月5日にシドニーのダウニングセンター地方裁に出廷する予定。