外国人の収容や送還のルールを見直す出入国管理・難民認定法(入管難民法)改定案の成立が見送られたことを受け、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(植松誠理事長)は3日、声明を発表した。同委は声明で、同法案が移民・難民を日本社会から排除することを促しかねない危険な法律になることに懸念を表明し、人道的見地が同法案のすべての施策に貫かれることを求めた。
声明は、これまでの入管収容と難民認定制度が、国際的な人権基準を十分に満たしているとはいえず、国連の人権関係機関から再三にわたる勧告を受けてきたと指摘。同法案については、一人一人の尊厳を守るという人道的観点が乏しく、すべての人々の基本的人権が十分に尊重されているものではないと言わざるを得ないとした。その上で、長期収容の解消と送還促進を図るという同法案の目的よりも、「紛争や内戦、環境破壊等によって自国を追われ、日本に逃れた人々の保護こそが優先されるべき」と主張した。
さらに、日本に保護を求めた人々の処遇が悪化することにつながると考えられる内容が、同法案に多く含まれていると指摘。例として、▽難民申請中の送還停止の規定に例外が設けられ、正当な手続きなしに難民が出身国に強制的に送還される可能性があること、▽身体の自由を制限する収容の可否を、司法の審査によらず入管当局が決めることや、その収容期間に上限がないこと、▽「人道配慮による在留許可」に代わる制度として、難民には該当しない「補完的保護対象者」が規定されているが、国際的な規範よりも非常に限定的に定義されていること、▽一定の要件下で退去の命令に従わない人を犯罪者とし、刑事罰の対象としていることを挙げた。
また、同委がこれまでにインドシナ難民やシリア難民の受け入れを実施してきたことに触れ、いかに難民が悲惨な戦禍から命の危険を賭して日本に逃れ、慣れない土地で必死に生活しているかを目の当たりにしてきたと指摘。同法案の審議に当たり政府と国会議員に対し、「すべての人の命は、国籍や在留資格に関係なく、等しく尊いとの観点から、人道的知見に基づき、国際人権基準にのっとった出入国管理および難民認定法の議論がなされることを要請します」とした。名古屋出入国在留管理局で収容中に亡くなったウィシュマ・サンダマリさんの事件にも触れ、入管施設の人権侵害と、その根本要因とされる排他的な難民認定制度に対しても、「決して目をそむけず人間の尊厳と基本的人権に基づいた、誠実な対応と議論を行うことを訴えます」とした。