「外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会」(外キ協)は4日、在日大韓基督教会名古屋教会で1月31日に開催した同法制定を求める「第34回全国キリスト者集会」の宣言を発表した。宣言では、2018年に改正され昨年施行された出入国管理・難民認定法(入管法)について、技能実習制度の矛盾が残ったままだと指摘。それにより、在日外国人がますます搾取・管理・排除される対象となっている現状があると訴えた。また、ヘイトスピーチやヘイトクライムが猛威を振るっているとし、放置すれば偏見と増悪が広がり、健全な社会の崩壊につながると警鐘を鳴らした。
宣言によると、外キ協は1月30~31日、「20世紀歴史課題と21世紀移民社会の宣教課題を考える」を主題に第34回全国協議会を開催。各地の外キ連、外キ協に加盟する各教派・団体、韓国キリスト教教会協議会(NCCK)の代表者ら51人が参加し、すべての人の人権と尊厳が守られる社会の実現のために、課題を学び共有するとともに、これからの取り組みについて協議した。
具体的には、カトリックさいたま教区で在日ベトナム人司牧の取り組みにより明らかになったという移住労働者への人権侵害の実態や生活支援の課題、朝鮮高校・朝鮮幼稚園の無償化除外をはじめとする外国ルーツの子どもたちの教育・保育に対する深刻な制度差別を学んだという。また、外国人被災者への取り組みの必要性も、被災者支援を行う団体の報告を通して確認。さらに、東北アジアの和解と平和を求める韓国教会の実践と課題についても共有し、国家とは異なる立場で教会が取り組んできた歴史とその重要性を分かち合った。
宣言はまた、現在の日本社会には、さまざまな領域で過去の侵略の歴史を否定する流れがあると指摘。歴史と向き合わなければ、「差別と対決し乗り越えることは不可能」と主張した。その上で「多民族・多文化共生社会の実現のために私たちは、日本・韓国・在日教会の共同作業を通して、歴史に向き合い、真実と和解に向けた対話を進めてゆきます」と表明。最後には「この地上にキリストの平和を実現することを、未来に向かう福音宣教の使命として歩み続ける」と決意している。
外キ協は1980年代以降、全国のキリスト者が取り組んできた外国人登録法(外登法)の改正運動を背景に、各地の外キ連と各教派・団体が87年に結成した全国協議会。98年には私法案「外国人住民基本法(案)」を作成し、以降その制定運動に取り組む。2012年には名称を「外登法問題に取り組む全国キリスト教連絡協議会」から、現在の「外国人住民基本法の制定を求める――」に変更(略称「外キ協」は変更なし)している。
外国人住民基本法(案)は全6部23条の構成。3年以上居住する外国人に直接請求や解散・解職請求の権利を認めたり(第20条)、3年以上居住する永住資格保有者の外国人に地方自治体への参政権を認めたり(第21条)するなど、賛否あり議論がなされている外国人参政権を規定している。