日本バプテスト連盟が、連盟主導でなく各個教会・地域が主体となる協力伝道を目指す4度目の機構改革に向かって動いている。国内のキリスト教諸教団では珍しく改革案をウェブサイトなどで公開。少子高齢化、献金の減少、コロナ下での活動、在日外国人クリスチャンとの協力など、どの教派も多かれ少なかれ同様に抱える課題にどう向き合っていくのか、率直な議論がなされている。
同連盟では2018年から19年にかけてすべての地方連合で協力伝道会議を開催。20年6月29日から7月1日には「これからの連盟検討委員会」(これ連)が「宣教会議2020~これからの協力伝道」を静岡県伊豆市の天城山荘で開催予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大のため1年延期した。今年に入り、2月17日に協力伝道会議で議論された論点を踏まえた資料(機構改革方針案)を各教会に5部ずつ送付するとともに、同連盟ホームページ内に設置した「これ連」の公式ホームページで資料を公開した。
資料は21ページにわたり、22年1月の同連盟第67回定期総会での成文化と決議を目指すためのたたき台としている。連盟から決定事項を上意下達式に下すのではなく、あくまで各個教会主義に立ち、連盟加盟教会と共に意見を出し合って協議し、意見形成をしていくという。
3月27日には、資料を元にオンライン会議「みんなで『これ連』〜機構改革を考える会」を開催し、120人以上が参加。会議の模様は「これ連」の公式ホームページに動画で公開した。
会議では、「これ連」委員長の吉田真司牧師(相模中央キリスト教会)が「どこへ向かうのか~機構改革案に込められたもの」と題して講演し、機構改革案の意図するところを解説。米南部バプテスト連盟の支援や前連盟事務所の売却益に頼ることなく、諸教会がささげる協力伝道献金によって支えられる体制への転換を理念として語った。
続いて同連盟宣教部長の松藤一作(いさく)氏が「なぜ改革するのか~教会の"今"、連盟の"今"」と題して講演。連盟の限られた人によって決めるのではなく、諸教会が意見を出し合って連盟のこれからを決定する目的があったと、改革の背景を説明した。
松藤氏は資料の中で、協力伝道会議を振り返ることにより、少子高齢化や建物の老朽化など各教会が抱える課題だけでなく可能性も発見されたとし、次のように述べている。
「さまざまなテーマの中でも特徴的だったことは、外国から来られた方々と共に礼拝や教会形成の働きにあずかっているケースが多かったことです。言語の違いにとどまらず、文化や習慣の違い、食べ物や礼拝のスタイルの違いに至るまで、そこにある豊かさはもちろんのこと、そこで生じる課題や難しさを受け止めながら、それでもなお『共に』ということにチャレンジしようとする教会の取り組みが、全国どの地域でも分かち合われていたことは、とても印象的でした」
協力伝道会議の事前配布資料では、世界195カ国から来た256万2千人に上る外国籍の人々が国内におり、今後も増え続ける傾向にあることが紹介され、次のようにパラダイムシフトを呼び掛けている。「教会は今後、国境・国籍を超えた『人々のプラットフォーム』としての役割を果たしていくことが求められていきます。象徴的な言い方をすれば『日本人の牧師が日本語で日本人の会衆に日本人のメンタリティーに根ざして説教を語る』という時代は劇的に変化していきます。どのように迎えるのか、という歓待の宣教とも言えるでしょう」
「これからの協力伝道~諸教会、地域、全国」と題して講演した「これ連」委員の鈴木牧人牧師(姪浜キリスト教会)は、資料の大切なポイントとして、「現在、財政的に困難を覚える中、懸命に宣教の業を担っている教会がいくつもある。それらの教会と対話しながら思うのは、必ずしも財政の課題ばかりが重要ではないということだ。何より問われているのは教会に集っている私たち一人一人がきちんと自分の言葉で自分の教会のことを語れるかどうかではないだろうか」(18ページ)との意見が出たことを取り上げた。
また、福島県郡山市の教会が連盟に加盟する際、総会で加盟教会の人々から拍手で迎えられ、初めて連盟としての一体感と喜びを感じたエピソードを紹介。連盟の働きを一部の人々の奮闘で終わらせるのではなく、一人一人が自分ごととして捉える必要性を語った。
会議終了後の「感想意見」では、「宣教の痛みや喜びを共感、共有できる連盟を形作るために、今日のような交わりを重ねていければと思わされました」「方向性に賛同。『おまかせ』型教会員が多いのも実態。そういう会員を認めつつ、まずは連合の集会に参加するところからかなと思います」「今日は貴重な機会をありがとうございます。キリストの体になっていく。その視点でつながりを広げていけるように祈ります」など、肯定的な意見が多く寄せられた。
資料に示された改革ロードマップによると、同連盟は2022年度に連盟規約と総会規則を改定し、新制度による理事選挙を実施。翌23年度に新制度による理事会を発足させる。26年度には収支バランスを確保するとともに連盟事務所の新体制を確立させ、29年度に機構改革の評価を行うとしている。