日本バプテスト連盟の靖国神社問題特別委員会は11日、那覇市が管理する公園に建つ孔子廟(びょう)「久米至聖廟」について、市が公園の使用料を全額免除していたことを、憲法の定める政教分離原則に違反するとした最高裁判決を評価する声明を発表した。孔子廟は、儒教の祖である孔子を祭る廟。国内には、湯島聖堂(東京都)や足利学校(栃木県)など著名な孔子廟が複数あるが、今回の判決は個別の事例を検討した内容であることから他への影響は限定的とみられている。
声明は、▽久米至聖廟が宗教施設であることを明確にした、▽信教の自由の保障という目的に基づいて判決を下した、▽自治体が観光資源であることなどを理由に安易に財政支援を容認する風潮に警鐘を鳴らす効果があったとして判決を評価。一方で判断の過程において、宗教的少数派ではなく「一般人」「社会通念」「社会的・文化的諸条件」など多数派を基準としていることは、信教の自由の本質を見誤っていると批判した。
判決は、信教の自由を定めた憲法20条と政教分離を定めた憲法89条を指して、政教分離原則が国家や地方公共団体の非宗教性ないし宗教的中立性を意味するとし、「信教の自由を確実に実現するためには、単に信教の自由を無条件に保障するのみでは足りず、国家といかなる宗教との結び付きをも排除するため、政教分離規定を設ける必要性が大であった」とした。
一方で、国家と宗教の関わり合いには種々の形態があり、すべての関係を否定するものではないとし、「その関わり合いがわが国の社会的、文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものと認められる場合に、これを許さない」と、限定的な分離であることを示した。
その上で、廟内部には「孔子の像および神位が、その左右には四配の神位がそれぞれ配置され、家族繁栄、学業成就、試験合格等を祈願する多くの人々による参拝」を受けていること、「大成殿の香炉灰が封入された『学業成就(祈願)カード』が本件施設で販売されていた」ことを挙げ、「神体または本尊に対する参拝を受け入れる社寺との類似性がある」と宗教性を認めた。
また、廟内で行われる孔子の霊を迎えて送り返す儀式「釋奠祭禮」(せきてんさいれい)については、「その内容が供物を並べて孔子の霊を迎え、上香、祝文奉読等をした後にこれを送り返すというものであることに鑑みると、思想家である孔子を歴史上の偉大な人物として顕彰するにとどまらず、その霊の存在を前提として、これを崇め奉るという宗教的意義を有する儀式というほかない」とし、「宗教的意義を有する儀式である」と結論付けた。
判決は、観光資源としての意義や歴史的価値をある程度認めつつも、その宗教性から、公園の使用料を免除することは「一般人の目から見て、市が参加人の上記活動に係る特定の宗教に対して特別の便益を提供し、これを援助していると評価されてもやむを得ない」と判断した。
那覇市は10日、判決に関する見解を発表。これまでの対応について、「都市公園法上の教養施設に当たるものとして、関係法令に基づき免除としていた」とし、廟の管理団体である久米崇聖会についても「一般的な血族集団である門中の構成員の集合体であって、何ら宗教・信仰によって結び付くものではない」と主張してきたと説明した。しかし、これらの主張が認められなかったことから、判決を真摯(しんし)に受け止め、今後は施設や催事の在り方などを久米崇聖会と調整し、使用料の債権についても請求を行うことで政教分離原則の違反解消に取り組むとしている。沖縄タイムスによると、市は判決で示された期間などをもとに、使用料として約3千万円を請求する予定だという。