菅義偉首相と田村憲久厚生労働相、井上信治万博担当相、大島理森(ただもり)衆院議長が靖国神社の秋の例大祭に真榊(まさかき)と呼ばれる供物を奉納したことについて、日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社問題委員会は21日、菅首相と大島衆院議長に対し、憲法の定める政教分離原則を遵守するよう強く求める抗議文を送った。
NCC靖国問題委は首相や閣僚、国権の長である衆議院議長が、その立場を利用して靖国神社での奉納をメディアに公然と知らせる方法で行うことは、日本政府と靖国神社が「特別な関係」にあることを宣伝する行為と指摘。さらに「政府や議会を代表する立場の者が報道を前にして行う行動は、国内外に『公的』な影響力を発揮する『公的な参拝』と言える」とし、「新政権が前政権の政教分離原則違反の悪しき行動を踏襲したことは非常に深刻な事態」と断じた。
靖国神社については、「明治維新・戊辰戦争以来、天皇の側に立って戦死した皇軍兵士を『英霊』として祀(まつ)り顕彰するために創られた神社であり、国民を侵略戦争へと駆り立て、アジア諸国に重大な犠牲者を生じさせる役割を果たした」と指摘。その上で「首相や閣僚、また国民の代表である衆議院議長が、これらの歴史の反省を重く受け止めず、同神社への奉納行為を行うことは、歴史に対して無反省であることを国内外に宣明する重大な問題」と強調した。
また、特にアジア諸国との外交に深刻な悪影響を及ぼしているとも指摘し、「以後、首相・閣僚および衆参両議院議長が一宗教法人である靖国神社の例大祭に、真榊等を奉納せず、憲法の定める政教分離原則を厳格に遵守するよう、抗議と共に要請する」とした。