2021年の「レント(四旬節)」が17日、始まった。イエス・キリストの復活を祝う「イースター(復活祭)」までの46日間がレントとなる。イースターは毎年日付が変わる移動祭日で、2021年は4月4日。しかし曜日は日曜日と決まっており、レントの初日も自動的に水曜日となり、「灰の水曜日」と呼ばれる。
レントは、日本語では「四旬節」(カトリック)、「大斎節」(聖公会)、「受難節」(プロテスタントの一部)と、呼び方はさまざま。期間は「四旬節」と言うように、40日間とされるが、これは日曜日を数えない場合の日数で、日曜日を含めると46日間となる。「40」という数字は、キリストが公生涯に入る前に荒れ野で40日間断食し悪魔の誘惑を受けたことや、エジプトを脱出したイスラエルの民が約束の地であるカナンに入る前に過ごした荒れ野での40年間などを象徴している。
灰の水曜日、レントの過ごし方
教派によって違いはあるが、灰の水曜日にはミサや礼拝が行われ、礼拝者の額に灰で十字の印を付ける「灰の式」などが行われる。聖書には灰をかぶって罪を嘆く描写が多くあり、灰は悔い改めを象徴する。教会暦を重んじる教会では、レントをキリストの受難を思い、悔い改める期間として過ごす。
レントの色は紫で、教会暦に合わせた典礼色を用いる教会では、聖卓(祭壇)や説教壇のテーブルクロス、司祭や牧師の祭服、ストールなどが紫で統一される。
カトリックでより重要視
米ライフウェイリサーチの2017年の調査(英語)によると、米国でレントを守る人は全人口の24パーセント。教派別では、カトリックが61パーセントと多く、プロテスタントは20パーセント。しかしプロテスタントの中でも、福音派は28パーセントと若干多いとされている。
レントの期間、断食や食事、その他の行為を節制する人も多い。カトリック教会では、限定的な断食である「大斎」と「小斎」を定めている。カトリック中央協議会のホームページによると、一部の食事を制限する大斎は18歳以上60歳未満が対象で、灰の水曜日と聖金曜日(イースター直前の金曜日)に守る。また肉類を食べない小斎(各自の判断で他の償いの形式に変更可能)は14歳以上が対象で、祭日を除く毎金曜日に守るとしている。
カトリック東京大司教区は17日、ホームページに菊地功大司教のメッセージを掲載した。菊地大司教は、昨年に続きコロナ禍の中で灰の水曜日を迎えることに言及し、「四旬節を始めるに当たり預言者ヨエルは、『あなたたちの神、主に立ち帰れ』と呼び掛けます。四旬節はまさしく、私たちの信仰の原点を見つめ直すときです。信仰生活に諸々の困難を感じる今ですが、信仰の原点への立ち返りを忘れてはなりません」と伝えている。
レントの由来、歴史
レント(Lent)という言葉は、アングロサクソン語で「春」を意味するレンクテン(Lencten)と、レントの期間の大部分が該当する「3月」を意味するレンクテンティッド(Lenctentid)から派生したとされる。教会史に残るレントに関する最も早い言及は、325年のニカイア公会議において。この公会議では有名なニカイア信条に加え、20箇条のカノン(教会法)も制定されており、カノン第5条はレントについて述べている。
特別なレント最後の1週間
レントの最後の1週間は「聖週間(受難週)」。その始めであるイースター前の最後の日曜日は、キリストのエルサレム入城を群衆が棕櫚(しゅろ)の枝を手に歓迎したという聖書の記述から「パームサンデー(棕櫚の日曜日、枝の主日)」と呼ばれる。聖週間の最後は「過越(すぎこし)の聖なる3日間」として、キリストが弟子たちの足を洗ったことに因み、司祭や牧師が信徒の足を洗う「聖木曜日(洗足木曜日)」、キリストの十字架上の死を記念する「聖金曜日(受難日)」、そして「聖土曜日」が続き、日曜日にキリストの復活を祝うイースターを迎える。
※ 各祭日や期間は、教派により記事中に記述した以外にもさまざまな呼称があります。