英国で26日、新型コロナウイルス感染症による死者が10万人を超えたことを受け、英国国教会の首席聖職者であるカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーと、次席聖職者であるヨーク大主教スティーブン・コットレルが連名で公開書簡(英語)を発表した。
2人の大主教は書簡で、「10万人という数字は単なる抽象的な数字ではありません。それぞれの数字は一人の人間です。それは、私たちが愛した人であり、私たちを愛してくれた人です」とコメント。「私たちはまた、これらの一人一人が神に知られ、神に愛された存在であったことを信じています」と語った。
また、十字架にかけられたイエス・キリストを通して人間の元に来られる神は、人間の悲しみと苦しみを知る存在だと説明。「ですから私たちは、恐れを感じている人、迷いを感じている人、孤立している人、すべての人に、その恐れを神に委ねるよう勧めます」と述べた。
貧困層や民族的少数派、障がい者などの社会的弱者がコロナ禍にあってより深刻な苦しみを経験していることにも触れ、こうした人々が「不平等に対する癒やしを求めて泣き叫んでいる」と訴えた。
その上で、医療者や科学者の助言に基づき、政府が示しているガイドラインに可能な限り従うよう奨励。「私たちは、ウイルスの拡散を止めるためにできる限りのことを確実に行うことで、互いへの献身、ケア、愛を示すことになります」と語った。
多くの人々が「これまでにないほどの孤立、孤独、不安、落胆」を経験し、経済的なダメージを被っているとし、大主教らは「ですから、私たちはお互いに支え合う必要があります」と訴えた。特に誰もができることの一つに祈りがあるとし、2月から毎日午後6時に祈りの時間を設けるよう提案。「今まで以上に、私たちはお互いを愛し合う必要があります。祈りは愛の表現です」と呼び掛けた。
また、医療従事者やソーシャルケアワーカーらの存在は、「わが国にとって何という恵みであり、生命線なのでしょう」と述べ、聖職者を含め新型コロナウイルス対策の最前線で働く人々に謝意を伝えた。新型コロナウイルスのワクチンについては、「神が科学者や研究者に与えた知恵と賜物の証し」だと述べ、機会が来れば接種するよう強く勧めた。
最後には、「何よりも、神がイエスを死からよみがえらせてくださったので、私たちには希望があります」と言明。「私たちは、イエスの復活を分かち合うという希望の中で生きています。死には最後の言葉がありません。神の国では、すべての涙が拭い去られます」と伝えた。
新型コロナウイルス感染症による死者は28日現在、米国が42万8千人で最も多く、その後、21万8千人のブラジル、15万3千人のインド、15万2千人のメキシコが続く。10万人を超えた英国は世界で5番目に死者が多く、欧州では最も深刻な状況にある。
英国では昨年末に感染力の強い変異ウイルスが確認され、その後死者が急増した。規制を強化しているにもかかわらず、死者が1日に千人を超えることも少なくない。一方、ワクチン接種は昨年12月から始まっており、これまでに680万人以上が1回目の接種を済ませたとされている。