コロナ禍であっても、イエス・キリストの降誕を祝いたいという願いは全世界共通のようだ。クリスチャン人口1パーセント未満という不名誉な記録を更新している日本においても、クリスマスは一大イベントとなっている。
クリスマスイブの24日とクリスマスの25日、2日間にわたって、大阪府八尾市のショッピングモール「アリオ八尾」で、地元のキリスト教会とタイアップした正真正銘(?)のクリスマスイベントが開催された。
この地区では、グレース宣教会(藤崎秀雄代表牧師)と八尾福音教会(道本純行主任牧師)が中心となって、毎年のようにアリオ八尾でクリスマスイベントを開催してきた。その信頼関係に基づいて今年も企画されたイベントである。アリオ八尾内に昨年オープンしたイベントスペース「光町スクエア」で、24日午後から25日夕方まで、ほぼ途切れることなく音楽が奏でられ、牧師が説教し、そして祈りがささげられた。これはまれに見る「地域密着型」の伝道集会である。その経緯と当日の様子をレポートしたい。
コロナ禍の中、こうした機運が高まるきっかけとなったのが、昨年10月にグレース宣教会の音楽宣教師に就任したドリーン・アイビー氏の存在である。アイビー氏は着任後、コロナ禍にあっても精力的に活動を継続し、アリオ八尾でも数回、ステージを務めた。その集大成として、11月23日にはグレース宣教会の大聖堂でソロコンサートを開催。コンサートは感染対策のため、400人収容可能なホールに入場者を100人にまで制限し、朝と夕の2回にわけて行った。その様子を見に来たアリオ八尾の関係者が大いに感動し、「24、25日はすべてお任せします。PA(音響機器)だけはこちらで業者を手配しますから」とオファーを頂いたのであった。
アリオは、クリスマスイベントの一環として、120万人ものチャンネル登録者を擁するユーチューバーピアニストのハラミちゃんを招き、全国のアリオ20店舗をオンラインでつないで一緒に歌うという企画を打ち出していた。その協力をアイビー氏に依頼してきたという構図である。具体的には、ハラミちゃんにアリオ八尾に来てもらい、アイビー氏とコラボする、という内容であった。残念ながらコロナ第三波の影響でこれは実現しなかったが、24日夕方にはハラミちゃんのピアノに加え、アイビー氏、そして子どもたちのキッズクワイアが一つとなって、「勇気100%」を歌い上げることができた。アリオ側のイベントは大成功であった。
このこともあり、アリオはPA業者を翌日も手配してくれた。つまり、クリスマスイブとクリスマスの2日間は「何をしても、どんなことを語っても大丈夫」という無制約下で、教会主体のクリスマスイベントを敢行するチャンスが巡ってきたということである。
そこで八尾福音教会の札場聖副牧師と、グレース宣教会の牧師の一人である筆者が相談し、「今年は Team Yao で、いろんなクリスチャンミュージシャンたちと、この2日間を盛り上げよう」という方針が固められた。これは本番わずか1週間前のことであった。
ここで Team Yao に集められたメンバーを紹介しておこう。
まずは企画の中心となったアイビー氏。すでに何度か本紙でも紹介しているが、「オー・ハッピー・デー」を手掛けたエドウィン・ホーキンス氏の下で8年間奉仕したゴスペル界のレジェンドの一人である。そして八尾福音教会所属のゴスペルシンガー、向日かおりさん、同じく八尾福音教会で歌い手として活躍しながら神学校1年生である倉本みのりさん。加えて、上野芝キリスト教会の谷口卓嗣牧師、谷口氏の妻でゴスペルシンガー・ソングライターの白鞘慧海(しらさや・えみ)さん、さらに J-House 所属のゴスペルシンガーである久野久美子さん。そして久野さんの伴奏としてベーシストの齊藤尚男(たかお)氏、さらにクロマチックハーモニカ奏者の福本俊介氏という豪華なメンバーである。
24日午後1時からは、アイビー氏に加え、向日さん、倉本さんが出演し、トラディショナルなクリスマスソング、そしてオリジナルソングを披露してくれた。一方、アイビー氏はオープニング曲として、山下達郎の「クリスマス・イブ」をチョイス。フードコートに立ち寄った買い物客の足を止めさせるのに最適な楽曲であった。
翌25日は、各々の持ち歌やクリスマスソングを巧みにブレンドさせながら、午前11時半から午後1時半の2時間、そして午後1時からと午後5時から、各1時間のコンサートを行った。各回に牧師が「さりげなく」、それでいて「インパクトを残す」伝道説教を短く行った。それぞれの牧師はこの説教を「お説教」口調ではなく、「分かりやすく、ためになるワンポイント」をモットーに「7分間1本勝負」で挑んだ。
札場氏は、聖書を用いながらキリストがこの地に来られた目的を語った。ちょうどお昼時だったため、食べる手をとめ、話に聞き入る人の姿もあった。筆者は、アイビー氏との出会いからこのようなコンサートが開催できた経緯を話し、最後には「受けるよりは与える方が幸いである」という聖書の言葉を伝えた。
各プログラムの最後には、総出演で「きよしこの夜」を賛美。筆者がコロナ禍にある人々の守りと癒やし、そして祝福を祈った。中には涙を浮かべて聞き入る人もいた。
終演後、アリオ関係者から「Team Yao、素晴らしいですね。ぜひ来年も何回かお願いしたいです」と早速オファーをもらった。もちろん返事はYES!
地元のショッピングモールで、ストレートに福音を伝える機会が与えられ、しかも素晴らしいミュージシャン同士の絆も深めることができた2020年のクリスマス。これからきっとこの八尾の地に何かが起こるに違いない。目指すは「地域一番店」ならぬ、「地域一番宣教」である。
期待しつつ、新しい年を迎えたい。
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