スイス外務省は10日、西アフリカのマリで4年前にアルカイダ系の武装同盟組織「イスラムとムスリムの支援団」(JNIM)に拉致されていたスイス国籍の人質が殺害されたと発表した。キリスト教迫害監視団体「ワールド・ウォッチ・モニター」(WWM)などによると、殺害されたのは宣教師のビアトリス・ストックリーさん。JNIMから最近解放されたフランス人人質の証言により、殺害されていたことが分かった。殺害時の状況など詳細は不明で、スイス外務省は当時の状況の把握と遺体の回収に全力を注いでいるとしている。
マリでは8日、アフリカ宣教会(SMA)のカトリック司祭ピエルルイジ・マッカーリ神父(59)ら4人がJNIMから解放されていた(関連記事:アルカイダ系組織がイタリア人神父ら4人解放 西アフリカ・マリ)。WWM(英語)によると、このうちの1人であるフランス人人道活動家のソフィー・ペトロナンさん(75)が、ストックリーさんの殺害を証言したという。スイス外務省は発表(英語)で、殺害されたのは約1カ月前としている。
ストックリーさんは2016年1月、マリ北部の都市トンブクトゥで、JNIMの構成組織の一つである「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」(AQIM)に拉致された。12年にもマリ北部がイスラム武装勢力に占領された際、拉致されたことがあったが、この時は10日後に隣国ブルキナファソの仲介で解放された。親族の勧めで同年、スイスに一時帰国するが、「トンブクトゥしかない」と言ってすぐにマリに戻っていたという。
AQIMやJNIMはこれまで数回にわたり、ストックリーさんに言及したり、ストックリーさんら人質が映ったりする映像を公開し、マリで収監されている戦闘員らの釈放を要求するなどしていた(関連記事:アルカイダ系テロ組織、拉致した修道女や宣教師らの映像公開)。
ストックリーさんを知るマリの教会指導者がWWMに語ったところによると、ストックリーさんは2000年からトンブクトゥに定住するようになり、現地のスイス人教会で奉仕していたが、その後独立して働きを始めた。トンブクトゥの人気地区でありながら、武装グループが頻繁に出入りしていた地区で質素に暮らし、花を売ったり、キリスト教の教材を配ったりし、特に女性や子どもたちの間で親しまれていたという。
ストックリーさんの死を受け、スイスのイグナツィオ・カシス外相は、「われわれの親愛なる国民の死を知ったことは大きな悲しみです。この残酷な行為を非難し、遺族に深い哀悼の意を表します」とするコメントを出した。