西アフリカのマリに拠点を置くアルカイダ系テロ組織が1日、外国人の人質6人が映る映像を公開した。人質のうち3人はコロンビア、スイス、オーストラリアの修道女やキリスト教宣教師とみられる。
オンラインでテロリストの監視を行っている「サイト・インテリジェンス・グループ」によると、先ごろ結成された武装勢力「イスラムとムスリムの支援団」は1日、外国人捕虜6人の生存を示す映像を公開した。この勢力は3つのグループが合流して結成されたテロ組織で、3月にアルカイダに忠誠を誓っている。
映像の人質6人の中には、コロンビア人修道女のグロリア・セシリア・ナルバエス・アルゴティさん、オーストラリア人外科医で宣教師のケン・エリオットさん、スイス人宣教師のビアトリス・ストックリーさんらが含まれる。また、南アフリカ人のスティーブン・マッゴーワンさん、ルーマニア人のイウリアン・ゲルガットさん、フランス人のソフィー・ペトロナンさんらの姿もあった。
アルゴティさんは2月、マリ南部のブルキナファソとの国境に近い村カランガッソにある修道院で拉致された。キリスト教迫害監視団体「ワールド・ウォッチ・モニター」(WWM、英語)よると、この映像は、アルゴディさんが拉致されて以来、初めて彼女の生存を確認できる証拠となった。映像が公開されるまで、アルゴティさんの拉致に関する犯行声明などはなく、彼女の居場所に関する情報もなかった。
米ABCニュース(英語)によると、コロンビア外務省は2日、声明を発表。「彼女(アルゴティさん)の生存が分かったことは、適切なタイミングの解放に向けて、われわれが努力を続ける励みになる」とコメントした。
82歳と高齢のエリオットさんは昨年1月、ブルキナファソ北部の町ジボで妻のジョセリンさんと一緒に拉致された。2人の拉致は、ブルキナファソの首都ワガドゥグに拠点を置くアルカイダ系武装勢力が、カナダ人キリスト教徒6人と米国人宣教師のマイケル・リダリングさんら29人を殺害したと伝えられたのと同じ日に報じられた。ジョセリンさんは、拉致から1カ月後に解放されている。
エリオットさんは映像の中で、「この映像は、さまざまな政府、特にオーストラリアとブルキナファソの両政府に対して、私の解放交渉に向けてできる限りのことをするよう、求めるものです」と語っている。また、家族に向けては次のように話した。
「私はあなたたち全員を愛しており、すべての祈りと配慮に感謝している。そのことをもう一度伝えたかった」
スイス人女性宣教師のストックリーさんは昨年1月、マリ北部の都市トンブクトゥで拉致された。40代のストックリーさんは、12年にも武装勢力に拉致されたことがあり、今年1月に公開された別の映像では、家族に対し「健康状態は良好」だと伝えていた。
映像は、フランスのエマニュエル・マクロン大統領がマリを訪問する数時間前に公開された。映像内のナレーターは、マクロン大統領にも呼び掛け、フランス人の人質であるペトロナンさんが「新しいフランス大統領が彼女の救助に来ることを望んでいる」と話している。
「フランス政府とエマニュエル・マクロン大統領。この非常に困難な状況から私を救うため、あらゆることをしていただけるようお願いします」と、ペトロナンさんは映像で訴えている。
マクロン大統領は2日、ニジェール、マリ、チャド、ブルキナファソ、モーリタニア各国の指導者らとマリで会見し、この地域の過激派に対抗するため、新たな多国籍軍による支援について話し合った。マクロン大統領は、「あの人々は何でもない。彼らはテロリストであり、凶悪犯であり、暗殺者だ。われわれはすべてのエネルギーを投入して、彼らを撲滅する」と述べ、強硬な姿勢を示した。
映像の公開前には、スウェーデン人のヨハン・グスタフソンさんが解放された。グスタフソンさんは、マリのアルカイダ系組織により2011年から捕らえられていた。
英BBC(英語)によると、スウェーデンのマーゴット・ウォールストローム外相は、グスタフソンさんの解放について、外務省と外国当局間の広範な努力と協力の結果だと語った。