英国国教会の児童性的虐待に関する独立調査委員会は6日、1940年代から2018年までの約80年間に、同教会の聖職者や責任ある立場の人など計390人が性犯罪で有罪判決を受けていたことなどをまとめた報告書(英語)を発表した。報告書によると、同教会の主要な保険会社は2003年から18年にかけて、未成年者の性的虐待に関連する訴えを217件処理していたという。
報告書は、「英国国教会の文化」が災いし、「虐待者が身を隠すことのできる環境」があったと指摘している。
「教会の権威や個々の司祭に敬意が払われ、性の在り方にまつわる対話がタブー視され、被害者よりも被疑者の方が擁護される環境は、多くの被害者が泣き寝入りせざるを得ない状況をもたらした」
「児童性的虐待の背景には、教会の評判を守ろうとするあまり、子どもや若者の身体的、情緒的、霊的幸福をないがしろにする風潮があり、それは純真で無防備な者たちを愛し、いたわるという教会の使命に逆行するものだった」
報告書は多くの事例を引用し、英国国教会が聖職者による性的虐待に関する信頼に足りる訴え、すなわち複数の告発を受けている者たちを不適切に取り扱ったことを伝えている。
1984年から93年までマンチェスター大聖堂の首席司祭を務めていた故ロバート・ウォディントン司祭は、複数の告発を受けていたにもかかわらず、司祭職にとどまり続けることが許された。報告書は「(ウォディントン司祭は)高齢で体が弱っていたため、(虐待の)リスクがまったく考慮されず、子どもたちに接触していたようだ」としている。
別の事例には、イアン・ヒューズ司祭による児童ポルノ事件がある。ヒューズ司祭は延べ8千枚の児童ポルノ画像をダウンロードした罪で有罪判決を受けた。しかし、ヒューズ司祭の監督者に当たる司教は、「(ヒューズ司祭が)誤って児童ポルノを閲覧してしまっただけだ」と主張。「ポルノはそれほど広範に流布され、閲覧されている」と弁護した。
報告書は「児童保護の実践において英国国教会内で多くの重大な改善がなされたが、犠牲者の信頼を回復するには依然として不十分」としている。
「『過去事例見直し計画』(2009年に完了)をはじめとし、英国国教会は過去の失態を明らかにする取り組みを実施したが、取り組みには欠陥や不備があった。資料の(保管)場所を見つけるのが困難であるとともに、問題の規模についても不正確な印象が持たれた。この点は、教区からの返答に不一致があったことで悪化した可能性がある」
報告書の提言には、教区レベルでの保護構造の強化、教区保護官の意思決定権の拡大、「内部進捗の再確認」の定期スケジュール化、英国国教会から犠牲者に向けた牧会的支援改善の必要性などが含まれていた。
さらに、誰かが未成年者を性的に虐待したと告白した場合は、常に「告白の印」(告解における聖職者の守秘義務)の機密性の無効化を検討すべきだと提言した。
英国国教会の児童保護担当司教であるジョナサン・ギブス司教(ハダースフィールド教区)と、同教会の児童保護責任者であるメリッサ・キャスレイク氏は6日、この報告書に応え、共同声明(英語)を発表した。
ギブス司教とキャスレイク氏は、「英国国教会全体がこの調査から教訓を学ばなければならない」とした上で、「(報告書に)目を通して衝撃を受けた」と述べた。
「この報告書で私たちが注目すべき点は、英国国教会が(性的虐待からの児童の)保護に失敗したことによって、犠牲者と生存者に生じた苦悩を認識しなければならないということです」
「犠牲者と生存者に向けた支援を改善するため、私たちは報告書の勧告の重要性を心から認識していますし、それに完全にコミットしています」
2人は「謝罪したからといって被害者や生存者に対する虐待の影響が取り除かれることは決してありません」とした上で、それでも「謝罪が必要となる事態をもたらした出来事について、私たちが恥じていることを知っていただきたい」と述べた。
「近年、一定の改善が見られたものの、犠牲者や生存者に対する支援をはじめとする一部の分野で進展が遅すぎたことを心から遺憾に思っております」
「過去5年間の綿密な調査に関して、BBCの国際ニュース番組『インクワイアリー』に感謝しています。また『告白の印』と報告義務の重要な分野について、さらなる提案がなされることを心に留めています」