コロナウイルスの封じ込めで当初は高い評価を得ていた韓国だが、8月に入って教会がクラスターとなる形で感染が広がった。事態を重く受けた政府は首都圏の教会の礼拝を中止し、オンラインに切り替える方針を打ち出した。
8月23日時点の首都圏における重傷者の病床稼働率は60パーセントを超えており、今後の推移が見守られる。
問題となった教会の主任牧師は、保守的政治活動に積極的に関与しており、8月15日のソウルで開催された保守団体集会でも主導的な役割を果たした。ところが17日に自らが陽性であることが検査で分かり、防疫上の自己隔離の方針に違反したとして各方面から批判を受けている。
事態はクラスター発生源となった教会が所属し、国内30教団、約5万6千教会が属する「韓国基督教総連合会」を巻き込む形となり、連合会は、教会が感染拡大の経路となったことを深く陳謝した。
一部では、当該教会や牧師が、極端な親北路線を取る現文在寅政権に対し、痛烈に批判反対する活動を展開していたために、政府が潰しにかかったとする陰謀論めいた話もあるが、事実は定かではない。
米国同様、韓国でも「信仰の自由」と「公共の秩序」の両者を、どのように折り合いをつけるのかが大きな課題となっている。
事態を受けて、8月27日に、文在寅大統領がプロテスタント指導者たちを招待し大統領府懇談会を開いた。韓国基督教総連合会共同会長のキム・テヨン牧師は「宗教の自由は命にも代えることができない」「宗教団体を営業所や事業所と同じように扱うことはできない」と述べ、キリスト者の立場を明らかにした。
この件に関しての韓国一般社会の反応は概ね教会に批判的な声が強いようだ。またキリスト教界内でも見解が割れている。
一方で、この緊急事態に乗じて、国家権力が権限強化されている世界的傾向も懸念される。
この混乱の時にも、為政者と教会指導者らの上に、神の知恵が与えられるよう祈ろう。感染拡大が速やかに収束し、韓国の兄姉らが伝道と宣教に励むように祈っていただきたい。
■ 韓国の宗教人口
プロテスタント 35・3%
カトリック 9・2%
仏教 23・7%
儒教 2・7%
イスラム 0・3%