白人が多数を占める教会が、黒人神学生による牧師補の採用申し込みを、黒人であることなどを理由に拒否していた問題をめぐり、英国国教会がこのほど謝罪した。
牧師補としての受け入れを拒否されたのは、米シカゴ出身のオーガスティン・タナーイムさん(30)。英ダラム大学のセント・ジョンズ・カレッジに在学中で、採用拒否を通知する電子メールを受け取った際には「深い痛み」を感じたという。
タナーイムさんが、イングランド南部にある英国国教会に属する教会から、このメールを受け取ったのは今年2月のこと。5月末から米国の「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」運動が再熱したことを受け、英国国教会の主教らが人種差別に反対する声明を発表する中、自身が受けた境遇も知ってもらいたいと、今月5日にツイッター(英語)でメールを公表した。タナーイムさんはこれを含め、計8の教区から牧師補としての受け入れを拒否されたという。
公表されたメールには、教会側がタナーイムさんの「顕著な賜物」を認めつつも、教会の信徒の多くが白人の労働者階級であることなどを理由に、受け入れを断る内容が書かれている。
「提出いただいた書類について、牧師と話し合いました。あなたは顕著な賜物をお持ちですが、残念ながら、当教会の牧師補の職について、これ以上お話をする価値を見いだせずにいます。私たちは、該当職の要件があなたに十分『あっている』のか、確信できずにいます。
第一に、当小教区の人口構成はほとんどが白人の労働者階級で、あなたには不快に感じられるかもしれません。第二に、あなたは当教会の牧師の下よりも、より経験豊富な牧師の下で牧師補に就かれるのが最も相応しいと感じています」
タナーイムさんは、このメールについて英BBC(英語)に次のように語った。
「私はシカゴ出身のアフリカ系米国人男性で、両親と祖父母は公民権運動の時代を生きていました。そんな私は、自分の人種と牧師をする能力は無関係だという理解をしていました。英国国教会には、(人種差別に関する)制度上の問題があると思います」
英国国教会の教職管理部門の責任者を務めるクリス・ゴールドスミス主教は、タナーイムさんへの対応について、該当教区はすでに誤りを認め、書面で謝罪したとして、次のように述べた。
「牧師補であろうと他のいかなる職務であろうと、民族的境遇を理由に拒絶された方がおられるかもしれず、私たちはそのような嫌疑があることを真摯(しんし)に受け止めています」
「英国国教会の指導者が、すべての英国民に受け継がれた霊的豊かさの代表者となるためには、英国国教会のさらなる努力が必要であることを私たちは十分認識しています」
英国国教会のトップであるカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーは9日、人種差別に対する抗議行動に応答する動画(英語)を公開。その中で、英国国教会そのものにも人種差別に関連する「誤りがある」ことを認め、「自分たちの家を整然と整え、自分たち自身の歴史的誤りと過失を認める人々になること」が求められていると語った。