新型コロナウイルスの発生地である中国・武漢で、一般市民にマスクを配布しながら伝道していた伝道師が23日、伝道と教会開拓をテーマにしたオンラインイベントを開催中、警察に連行された。伝道師は約4時間半にわたり拘束された後、釈放されたという。
在米迫害監視団体「国際キリスト教コンサーン」(ICC、英語)によると、連行されたのは、武漢南京路教会の駱(ルオ)伝道師。この日は、インターネットのテレビ会議サービス「Zoom(ズーム)」を使って、「イエスの福音を宣(の)べ伝えよ」をテーマにした1日がかりのイベントを開催していた。プログラムは午前と午後に分かれていたが、警察が正午ごろ、駱氏の自宅に突然やって来て、伝道関連の資料や出版物を調べた上で、駱氏を連行した。
連行現場の写真をツイッター(中国語)で公開した在米中国人団体「華人基督徒公義団契」(CCFR)によると、駱氏は尋問中、新型コロナウイルスがまん延していた武漢でクリスチャンがいかに市民のために奉仕したかを熱弁し、警官たちを黙らせてしまうほどだったという。
「私は、警察はなすべき職務をしていないと堂々と語り、警官たちを叱責しました。クリスチャンたちは自分の命を後回しにして、善意の行いをしました。しかし警察は、彼らを悪者扱いしたのです。これは不条理です」
「また私は、何度か警官たちに真剣に話しました。私はただキリストのためだけに生きる者です。それ以外のことは問題にしません。ただし、伝道に対する熱意を捨てることは決してありませんと」
米フォックス・ニュース(英語)によると、駱氏や武漢南京路教会は、武漢で新型コロナウイルスの感染が拡大し始めると、路上で伝道トラクトとマスクを無料で配ることを開始。非常に困難な状況にあった武漢市民は当時、トラクトとマスクの両方を喜んで受け取ったという(関連記事:新型コロナウイルスに負けずマスク配布し伝道、武漢のクリスチャンに市民から感謝の声)。
中国では今月3日にも南東部の厦門(アモイ)で、礼拝を行っていた政府非公認の「家の教会」が警官らによる突然の取り締まりを受けた。この取り締まりでは、信徒数人が負傷し、女性や子どもたちが泣き叫ぶ中、強硬に行われた(関連記事:女性・子どもの泣き叫ぶ声 中国警察、礼拝中の「家の教会」を強襲 信徒数人が負傷)。
ICC東南アジア地域担当マネージャーのジーナ・ゴー氏は、中国で新型コロナウイルスが収束に向かっているのに伴い、政府が国内のキリスト教に対する弾圧を再開したと見ている。
「ここ数週間、公認教会においても教会堂の取り壊しや十字架の撤去が中国全土で増加しています。一方、家の教会は、集会への立ち入りや嫌がらせを受け続けています。地方当局が適切な手順なしにこのような取り締まりを行ったことに加え、信徒や居合わせた人たちに対して過度の実力行使を行ったことは遺憾です。ICCは国際社会と米国政府に対し、中国の絶え間ない人権侵害を非難するよう求めます」