クリスチャントゥデイは2002年の創立以来、多くの皆様に支えられ、5月20日で満18周年を迎えることができました。これまで長きにわたり、ご愛読・ご支援いただき、誠にありがとうございます。創立18周年を記念して、今年は新型コロナウイルスが世界を席巻している状況を踏まえ、「100年に1度のパンデミック、教会は何を問われているのか?」をテーマに企画を用意いたしました。コロナサバイバー、牧師、神学校教師、大学教授、政治家、ホームレス支援者など、さまざまな立場の方から寄稿を頂きました。第4回は、6都府県に計21の会堂・チャペルがあるグレース宣教会の藤崎秀雄代表牧師による寄稿をお届けします。
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未知との遭遇
新型コロナウイルスの感染が本格化してきた3月上旬、初動における対応は「教会がクラスターとならないこと」を第一に考えました。その上で、信仰の献身者として、礼拝は自分の葬式と重篤な病の時以外は休まない、「一緒に集まること」(へブル10:25)を基本に、礼拝を含め実際に集まる集会は続けました。
社会の動きを注視しつつ、こうした信仰者の基本を大切にするためには、正しい情報の取得が何よりも重要です。エビデンスに基づいた判断をしようと、厚生労働省や世界保健機関(WHO)などからの情報収集に努めました。教会員に対しては、徹底的な感染防止対策を呼び掛け、既に経験済みの季節性インフルエンザやノロウイルス、病原性大腸菌Oー157などの対応の延長で、新型コロナウイルスに対しても感染対策を日常的に実施するよう求めました。
そうした中、大阪府八尾市にあるグレース大聖堂では3月下旬から、礼拝には集まりましたが、昼食は中止し、距離を空けて交わりを持つこと、手洗いやせきエチケットの徹底を呼び掛けるようにしました。
教会内での具体的な対策としては、▽礼拝時の常時換気、▽玄関ホールでの次亜塩素酸水の噴霧、▽礼拝前に手すり・椅子などを除菌シート・次亜塩素酸水で拭き掃除、▽玄関にエタノール消毒液を常備し、出入りの際などに使用、▽トイレの扉は開放したままにし、液体石けん、ペーパータオルの常設、▽互いの着席距離の間隔を広く設ける、などを行いました。
ユーチューブによる礼拝の配信は以前からしていたため、高齢者や基礎疾患を持つ教会員などには在宅礼拝を勧め、ユーチューブを視聴できない人には、礼拝の録音CDを配布しました。そして、以下に該当する人たちには礼拝参加の自粛をお願いし、同じく在宅礼拝か録音CDによる礼拝を推奨しました。
- 1週間以内にせきや37度以上の発熱、味覚嗅覚障害、風邪の症状がある場合
- 周辺に新型コロナウイルス感染が明らかになった人がいる場合
- 感染がまん延している地域から戻った場合
米国から帰国した信徒夫婦やフィリピンから一時帰国した宣教師夫婦もいましたが、各自で自主隔離を2週間していただきました。
緊急事態宣言が発令される
4月7日、東京や大阪など7都府県を対象に「緊急事態宣言」が発令されました。グレース宣教会は、大阪府を中心に6都府県に計21の会堂・チャペルがありますが、この時から、緊急事態宣言の対象となった大阪府下の会堂・チャペルと東京チャペルはすべて、在宅集会へ切り替えました。近隣住民にも、教会での集会はしばらく中止することや、教会で実施している具体的な感染防止策を告知し、教会の取り組みを知っていただけるようにしました。
さらにその後、緊急事態宣言が全国へ波及したため、山口、三重、奈良、京都の各県を含め、グレース宣教会に連なるすべての会堂・チャペルで、ウェブ配信による在宅集会へと切り替えました。牧師会や責任役員会も、LINEのグループビデオ通話やZOOMを用いて、ウェブ会議としました。
ウェブ配信による在宅集会については、たとえそれぞれの場所で参加するとしても、同じ時刻に、心を一つにして定例の集会に参加することを大切にしています。ウェブ配信はユーチューブで行っていますが、基本的にライブ配信ではなく、前撮りにしています。牧師やスタッフ、音楽宣教師がチームで取り組み、毎週、祈祷会や婦人会、礼拝の動画を収録し、編集を加えて、ユーチューブで定時に公開する形にしています。ユーチューブで配信している礼拝の視聴者数は、通常は200人ほどですが、多い時で700人が視聴するときもあり、急増しています。音楽宣教師による演奏も別に配信しており、宣教の一つのチャンネルとなっています。
週報などの紙媒体による情報は、ウェブでも配信していますが、郵送や教会員の兄姉による宅配も行っています。基本的に各会堂・チャペルの週報棚(「ラブバンドボックス」と呼んでいます)に週報を入れておき、自身で取りに来たり、郵便で送ったり、兄姉が宅配したりするなどして、教会員皆に届けられています。
献金は、教会に来られるときにまとめて献金箱に入れるようお願いしています。月定献金はもちろん、各集会でささげる献金も在宅集会時には通常通り袋に入れてささげることを大切にしています。各自の自覚次第となりますが、実際の金額は全体的には減っている現状があります。献金は、喜びです。人間の弱さ故と受け止め、常に励ましが必要です。
新型コロナウイルス対策においては「3密」を避けることが基本とされていますが、教会では互いに連絡を取り合い、祈りの課題を交換するなどし、信徒の皆さんの関係はむしろ密になっているようです。週報を受け取るため、また献金をささげるため、教会に来てくださる教会員もおられますが、一人一人と会えるのは時間的には非常に短いものですがより新鮮なものとなっています。
宣教面では、これまでは毎月1回、総員伝道として地域の人々に教会発行の新聞「グレースタイムス」(以前は「八尾新聞」)を配布していました。しかし現在の状況では、さすがに教会員が直接配布するのは感染防止の観点から証しにならないと考え、号外として新聞折り込みで配布することに切り替えました。新型コロナウイルスに感染して亡くなられた志村けんさんを偲んで「大丈夫だ」と題したものや、「コロナのおかげで」といったコラムを載せるなどし、その中で福音のメッセージを届けています。求道者にはダイレクトメールで送り、各会堂・チャペルの掲示板には大型ポスターとして貼り出しました。こうした時期だからか、意外に通行中の人たちが読んでくださっています。
緊急事体宣言解除から、次の段階へ
緊急事体宣言が解除された後、段階的な回復のプロセスをどうするかが課題です。緊急事態宣言以前のプロセスを逆にたどればよいかといえば、そうではありません。この感染症の終息は、おそらく1年近くかかると思われます。簡単ではありません。
まず集会については、日曜日の礼拝を含めたすべての定例集会を、会堂での集会と在宅集会の2本立てで行うことを考えています。つまり会堂での集会を再開しつつ、緊急事態宣言期間中に行ったウェブ配信とCD配布による在宅集会も平行して行う「ハイブリッド集会」です。高齢者や基礎疾患を持つ人たちは、緊急事態宣言が解除されても、しばらくは礼拝出席を休んでいただく必要があると思います。工夫と協力、訓練と励ましが必要です。
宣教の働き、特に人が実際に集まるものについては、社会の情勢を見ながら、時間をかけて再開していくことになります。ですから当面は、ウェブ上での情報発信を中心に、働きは主にSNSを通じて行うことになるでしょう。その時、注意すべきことは、相手の顔が見えない「不特定多数」へのアプローチです。双方向のレスポンスを取れるものもありますが、まだまだ研究すべき課題が多いと思います。
会議や打ち合わせなどは、ウェブ会議から実際に集まっての会議に戻していくことは可能と考えています。教会の教育講座である「GMS(Grace Mission School)」や、「グレースタイムス」の戸別配布も再開を考えています。スモールグループも再開し、今後は新たにスモールグループ単位による「グループケア」の開始を考えています。
生活困難者に対する働きは、新型コロナウイルスの影響で仕事を失った人、大学を中退せざるを得ない人、その他経済的に困難を覚える人が今後、多く出てくると考えられ、より求められてくると予想します。また、それに伴う牧会上の課題は多岐に及ぶでしょう。経済的困難者に対してはすでに、教会から「愛の支援」(現金給付)を行い、医療従事者・福祉従事者などには、激励の御言葉を書いた色紙や音楽宣教師の音楽CDを贈呈することなどを行っています。子ども食堂は、しばらくは3密を避けるため、弁当の配布などの方法で実施することになるでしょう。学童保育やブックハウス、カフェミニストリーは段階的に再開していくことを考えています。
コロナのおかげ
社会に、また教会にも大きな影響を与えている新型コロナウイルスですが、それは「負の影響」ばかりではなく、「コロナのおかげ」といえるさまざまな点もあります。
第一に、ホームページやユーチューブ、SNSの活用とともに、紙媒体から電子媒体への移行が加速し、さらに宣教の新たな手法に取り組む機会になりました。
グレース宣教会ではこの間、教会員一人一人が自分の救いの証しをトラクトにする取り組みを行っています。「むしろ、心の中でキリストを主としてあがめなさい。そして、あなたがたのうちにある希望について説明を求める人には、だれにでもいつでも弁明できる用意をしていなさい」(1ペテロ3:15)とあるように、誰にでも、いつでも、自分たちが抱く「希望」を弁明するための準備を始めています。教会で開く伝道集会でなく、各自の個人伝道により宣教を進める、文字通り原点回帰の機会です。また、友人や知人に手紙を書くことも勧めています。心を込めて自筆で書いた手紙やはがきを送ることで、特に高齢者の人々が多く伝道されることを願っています。
第二に、SNSによる交わりや牧会が強化されました。SNSを通した交わりは、依然よりもパーソナルなつながりを持てるという側面があります。関係が希薄になってしまうのではないかという危惧もありますが、しかしそれでも、実際に出会うことが難しい人たちとビデオ通話などで交わりを持つことができ、今後の牧会にも活用していけそうです。
第三に、不要不急な事柄の自粛を求められたことで、本当に大切なものに気付かされるようになりました。家庭礼拝や個人のディボーション、献金の自覚的な実行から経済管理、与えられた時間の活用、室内の整理や不要なものの処分など。「健康な信仰生活」こそ第一と確信し、教会員には最も大切なことのために時間を活用するよう勧めています。
コロナ前に戻るのではなく、ニューノーマル(新常態)へ
WHOシニアアドバイザーの進藤奈邦子氏が、日本経済新聞(4月22日付)のコラム「コロナと世界」で、新型コロナウイルスによる今の事態を「異常事態ではなく、ニューノーマル(新常態)」として捉え、対策を取る必要があると語っておられました。教会も、単にコロナ前の状態に戻ることを願うのではなく、この状況を「新常態」と受け止め、前に向かわなければなりません。すべては元通りにはならないのです。以下の御言葉を柱に、コロナ後を考えました。
2コリント5:17 今の時をキリストにあって新しくされる機会として、これからの働きを展開します。新しくされること・変化は成長と確信して、あらゆることに挑戦したい。
ローマ8:28 摂理の神様を信じる者にとって、常に主の御心を祈り求めながら歩む。今は困難だとしても、必ず主はすべてを総動員されて事を行う方であることを信じて歩む。
2テモテ4:2 時が良くても悪くても、われわれには常に取り組むべき課題があります。それは、福音を宣(の)べ伝えることです。
マタイ5:16 地域社会の中で、光を光として輝かせることです。特に、教会としての社会的責任を果たすことが求められます。
エペソ6:18 すべての祈りと願いを用いて、祈ることを基本にする。現在の事態が始まって以来、グレース宣教会では午後10時の祈り(十字架の祈り)を進めています。新型コロナウイルスで苦しむ人々のために、医療従事者・福祉従事者のために、そして人々の救いのために祈り続けます。
こうした御言葉の示唆を頂きながら、グレース宣教会として、コロナ後の社会、世界の中で働きを進めていきます。栄光在主。
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