イラク北部モスルで、過激派組織「イスラム国」(IS)に破壊された150年近い歴史のある教会の再建工事がこのほど始まった。
再建工事が始まったのは、1870年代に建てられた「時の聖母マリア修道院教会」(別名:アル・サーア教会)。アラブ首長国連邦(UAE)の支援を受け、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が取り組む復興プロジェクト「モスルの精神をよみがえらせよう」の一環。このプロジェクトではこの他、モスルのアル・タヒラ・シリア・カトリック教会の再建も行われる。
アル・サーア教会は、カトリックの修道会「ドミニコ会」が管理する教会で、ユネスコは同会からの正式な承認を得た上で、関係当局と緊密に連携して再建工事を行うとしている。「このプロジェクトには、がれきの撤去や現場の初期調査、工事の実施に向けた詳細な準備、建物の安定化や修復など、すべての行程が含まれます」とユネスコは説明している。
アル・サーア教会はモスル旧市街の中心部にあり、ISが2016年に爆破し、屋根が破損するなど甚大な被害を受けた。
ユネスコによると、再建工事は教会の文化的価値だけでなく、「モスル市民の兄弟愛の生きた模範」としても重要だという。
「この教会の修復は、文化遺産としての価値だけではなく、モスルの多様性、誇り高い文化の交差点、何世紀にもわたるさまざまな宗教コミュニティーの平和と安住の地の証しとしても重要です」
「モスルにおけるこの代表的建築物は市民の記憶と歴史に刻まれており、文化的多様性や住民たちの平和的共存を象徴しています」