宣教団体「ユース・ウィズ・ア・ミッション」(YWAM=ワイワム)の東京支部が、主催する伝道セミナー「ミリオンライツ」(A Million Lights=百万の光)の受講教会を教団教派を問わず全国で募集している。セミナーは1日のプログラムで、伝道の必要性を説き、実際に伝道する際のノウハウや方法論などを紹介し、最後には実際に学んだことを路傍伝道で実践する機会も持つ。
昨年までに日本各地の教会8カ所で開催し、参加者からは「とてもクリアだったのと備えてもらえたと感じました」「イエス様のことを、もっとシンプルでダイレクトな形で伝えられるようになり、自信がつきました」などの声が寄せられている。本紙は、セミナー講師を務めるマーク・アナンド宣教師と、通訳と補助を務める藤橋仰氏にインタビューを行った。両氏から、日本の教会による日本人伝道の必要性と可能性について、それぞれの召命と思いを伺った。前編では、マーク・アナンド宣教師のインタビューを掲載する。
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――宣教師になる以前はどのような働きをされていましたか?
米国の聖書学校に在学していました。その時は、神様に近いと感じることがほとんどありませんでした。妻のおじが牧会する教会に妻と共に通っていたとき、その教会の青年会の奉仕を手伝いました。その教会には青年担当牧師がいて、彼が辞めて別の牧師が青年担当になり、彼の手伝いもしましたが、彼も辞めていきました。その後、私に青年担当牧師になってくれないか、と要請がありました。私は青年会での奉仕に対して情熱を持っていたので引き受けることにしました。仕事をしながら、青年伝道の実際について学んでいきました。
私は1993年に結婚し、3人の子どもを授かりました。当時の生活はとても喜ばしいものでした。青年たちを連れてメキシコなどいろいろな国に訪問し、現地で伝道をしていました。そのようなスタイルに情熱を持っていました。何年もの間、私は青年担当牧師でしたが、だんだんと自分が情熱的になれる働きが、こうした直接的な伝道活動そのものであることに気付き出しました。
そして、中南米のグアテマラに引っ越す機会が与えられました。私たちは当初、現地の伝道を助ける働きを1年間だけする予定でしたが、それが伸びて10年も滞在することになりました。グアテマラでは、さまざまな素晴らしいことが起こりました。私たちは、ホームレスの人々にスープを提供したり、リハビリテーションセンターを訪問したりしました。多くの人がキリストを受け入れることを願い、叫び求めるような時でした。伝道セミナーも、このグアテマラで始めたものです。そして、グアテマラでの10年が過ぎてから、私たちは日本に心を留めるようになりました。
――グアテマラから遠く離れた日本を宣教地として選んだ理由を教えてください。
グアテマラでの生活がおよそ8年ほど過ぎたころ、私たち夫婦は2人そろって日本に行く夢を見たのです。それは、少なくとも私にとっては不思議な出来事でした。どのような夢だったか、内容は覚えていないのですが、妻に日本に行く夢を見たと伝えると、妻が「何ですって?」と驚くのです。彼女もつい最近日本に行く夢を見たというのです。
偶然には思えず、私はこれを心に留めておきました。そしてまた別の時に、何となく地球儀を回して適当に指を置いたら、私の指は日本に止まりました。近くを、ある女の子が通り掛かるのが見えたので、私は「あの子に回っている地球儀の上に指を置いてもらって、もし指が日本に止まったら、日本の宣教師になろう」と思いました。そして地球儀を回し彼女に指を置いてもらったら、何と日本に止まったのでした。
その後も、さまざまなことがありました。あるユーチューブの動画を見ていたとき、それは伝道に関する動画だったのですが、出演者がいきなり日本にどれほど伝道者が必要なのかを語り始めたことがありました。また、ある本を読んでいるとき、「神様、どうかこの本を通して私に語り掛けてください」と祈りました。するとその後、その本の著者が宣教師として日本で8年間を過ごした人だったことが分かりました。
すべての物事を通して、神様は自分に「日本、日本、日本」と語り掛けられているようでした。私は、自分のリーダーに神様が日本に移るように本当におっしゃっているようだと話し始めました。そうしたら、リーダーも理解してくれ、「よし行こう」ということになったのです。
そこで私たちは、日本のYWAM東京の事務所に電話をしてみました。「そちらには人員がもっと必要ですか?」と尋ねてみると、「はい、そうです」と返事がありました。そして、ビザを準備し、荷物をまとめ、日本にやって来たのです。日本に来てからさまざまなことがありましたが、1年前からこの「ミリオンライツ」伝道セミナーを始めました。
私たちが日本に来て、驚いたことがあります。日本にこれほどクリスチャンが少ないとは思っていなかったのです。日本が宣教師を必要としていることを知って驚きました。私たちは、日本人のクリスチャンが日本人を伝道する必要があると本当に信じています。伝道について学ぶ人々を訓練する働きに私たちは参与したいのです。海外から来た宣教師とは違って、日本人クリスチャンには文化的、言語的な障壁がありません。日本には大きな働きがもうすぐ起きるだろうと思っています。
――所属の宣教団体としてYWAMを選んだ理由は?
グアテマラに移ったとき、現地で宣教を行っていた人たちが、その働きをYWAMに任せることにしました。そのため私も、その1年後に自然とYWAMを選ぶことになりました。
――セミナーの参加者からはどのような反応がありましたか?
参加者には、セミナーの後でフィードバック用紙に記入してもらい、感想を聞いています。YWAM東京のウェブサイトの「ミリオンライツ」のページには、参加者の感想を、許可を得て掲載しています。とても良いフィードバックをもらいました。
日本のことわざに「出る杭は打たれる」というものがあります。目立つ者は批判の対象になるという意味です。日本で伝道をするためには、私たちは喜んで「出る杭」にならなければなりません。なぜならイエス様は本当に「出る杭」になり、そして「打たれた」のですから。
――伝道セミナーをする原動力は何でしょうか?
緊急性です。イエス様は99匹の羊と1匹の羊の例えを話されました。日本では100人のうち1人しかクリスチャンがいないのです。これはイエス様の例え話の反対です。99匹の羊が失われた状態で、1匹の羊が残っているように見えるのです。100匹の羊のうち99匹が失われたのなら、私たちはどれほどの緊急性を感じなければいけないのでしょうか。それくらい重要なのです。最も重要なのは、単純に福音のメッセージを聴いてもらうことです。人々は聴くことに飢えていますが、機会がないのです。私は実際に伝道するときに、未信者の人に、このメッセージをこれまで聞いたことはありましたか、と尋ねてみます。すると彼らは、一度も聞いたことがなかったと言うのです。だから私たちはこの緊急性をただ感じ、たくさんの人に伝道の訓練をしています。野火のように信仰覚醒は起き得るのです。
日本には大体、100万人のクリスチャンがいます。先日、グーグルで引きこもりの人たちが何人いるのかを調べてみたのですが、約100万人いるようです。もしかしたら日本のクリスチャンの多くは引きこもりの人たちように、自分たちの信仰を他の人にオープンに見せないようにしているのかもしれません。セミナーで私たちが教えることの一つは、どうやって自身の信仰を外に出していくかということです。どのように福音についての会話を始めるのか。福音を示す単純な方法はあるのです。私たちはどのように成長するかを語ります。そして、日本の人々と福音のメッセージを分かち合うように勇気づけます。
私が感じるには、日本人のクリスチャンの多くは、どのように福音を伝えるのかについて学んだことがないようです。学んだことがないために、伝えることに恐れを感じてしまいます。だから私たちが教えるのは、福音を伝えるための単純で簡単に覚えられる方法です。セミナーでは、1時間をとって実際に街に出て行き、福音を伝えてみます。教室での授業で終わるのではなく、実際に伝道するところまでやりたいのです。
――これまで何回セミナーをしてきましたか?
日本ではこれまでに、8回のセミナーをしました。東京で2回、千葉で2回、別府や兵庫、仙台でもしました。もっとたくさんの場所で開催したいと願っています。また、オリンピックまでに開催回数を増やしたいと思っています。オリンピックの時期には海外から人がたくさん来ますので。オリンピックというのは、伝道のためのただの理由付けです。日本における伝道は日本を勝ち取るためですが、私たちは日本のクリスチャンに国内だけでなく、海外にまで宣教に行ってほしいとも願っています。私たちだけが海外宣教をしているわけではないのです。私たちは宣教の働きの一部なのですから。その道が開かれるために、この記事が一助となることを願っています。
――この記事を読んだ読者へのメッセージをお願いします。
クリスチャンの皆さんは、この地球上に存在する他のどんなメッセージよりも素晴らしいメッセージをすでに持っています。福音を聴けるということは、宝くじに当たることよりももっと素晴らしいことなのです。例えば、誰かがあなたのがんを治癒してくれるとしましょう。しかし私たちは、福音はもっと素晴らしいことなのだと言えるのです。この地球上でもっとも素晴らしいメッセージを私たちは持っています。私たちはクリエイティブな方法で、それを分かち合うように励まします。もちろん大事な原則はあるのですが、それでも創造性豊かな方法があります。最高のメッセージを持っているのですから、それを持って出ていこうではありませんか。多くのクリスチャンは「どうやってすれば良いか分からない」と言うかもしれません。でも、大丈夫。それなら一緒に学びましょう。神様は、私たち皆を用いたいと願っておられます。2020年に神様がなされることを楽しみにしています。
――ありがとうございました。