ホテルや病院などに聖書を無料配布している国際ギデオン協会の国際本部(米テネシー州ナッシュビル)が、旧英国支部と商標権をめぐって争っていた問題で、英国の知的財産庁(IPO)がこのほど、国際本部の主張を認める判断を下した。敗訴した旧英国支部は、名称やロゴの変更を迫られることになった。
英キリスト教メディア「プレミヤ」(英語)によると、この問題は、英国の非営利法人を管轄するチャリティー委員会から平等法に基づく指摘を受け、英国支部が昨年、女性の会員受け入れを決めたことに起因する。
国際ギデオン協会は1899年の創設以来、会員は男性のみとなっている(男性会員の妻は夫人会員として参加可能)。そのため国際本部は、女性の会員受け入れを決めた英国支部から支部資格を剥奪。それまで英国支部から世界各国における聖書贈呈活動のため受けていた献金も受け入れを中止した。
こうしたことから、旧英国支部は名称を「The Gideons International in the British Isles」から「GideonsUK」に変え、ロゴも変更。昨年6月には新名称とロゴの商標登録を申請し、同年7月に登録された。これを受け、国際本部は同年9月、商標権の侵害を訴え、IPOに異議を申し立てた。
IPOのクレア・バウチャー登録担当長官は審議結果をまとめた文書(英語)で、「(旧英国支部による)商標登録申請は、これまでの商標所有者(国際本部)の事前の同意なしに行われたことが明確で、私の意見では、出願人(旧英国支部)が提示した理由は、そうした行為を正当なものとする合理的な理由を構成しない」と述べ、国際本部の異議を認めた。
旧英国支部は、商標登録が取り消され、係争によって生じた費用として国際本部に3290ドル(約35万円)を支払うよう命じられた。
この決定を受け、国際本部のダン・ヘイウェイ事務局長は米キリスト教メディア「クリスチャンポスト」(英語)に、「英国のIPOが、われわれの名称や標章を保護するために存在している商標法を支持したことをうれしく思います」とコメント。「IPOの決定を受け、われわれ指導部は、国際ギデオン協会の英国における今後の活動を検討することになります」と続けた。
一方、旧英国支部の会員であるエディー・マーティンさんはプレミアに対し、IPOの決定をそれほど重大に受け止めてはいないと語った。
「長年、英国支部で職員をしていた人の中には、名称を失うことをとても悲しむことでしょう。しかし、それは重要ではありません」とマーティンさん。「重要なのは、私たちが悩みを打ち明けることのできる神の言葉を求めているということです。別の名称がそれに役立つのなら、それは良いことであり、悪いことではありません。ですから、私はそれについてあまり心配していません」と語った。
国際ギデオン協会は1898年、米ウィスコンシン州の小さなホテルで、初対面のクリスチャン青年2人が偶然相部屋となり、互いに聖書を読み、祈ったことがきっかけで始まった。翌99年にもう1人の青年を加えて3人で発会式を行い、正式にスタート。現在は世界約200カ国に活動が広がっている。