教授2人からハラスメントを受けたと学生が訴えていた問題で、東京神学大学(東京都三鷹市、伊藤瑞男理事長)は、公式サイトに「ハラスメント問題特設委員会調査報告書を受けて」と題した文書を掲載した。それによると、弁護士2人を含む6人で構成された特設委は調査の結果、学生が訴えていたハラスメントについて「違法性は認められない」と結論付けた。一方、入試プロセスの不透明性や議事録の不十分さなど、ガバナンス上の問題点も指摘し、現行のハラスメントに関する内規の見直しなどを提言した。
同文書によると、ハラスメントを訴えたのは2016年4月に編入学した学生A。初めは教授Bからハラスメントを受けたとし、昨年11月に同大教授会下の「ハラスメント調査委員会」に申し立てを行った。その後、教授Cからもハラスメントを受けたとし、同年12月に申し立てを追加。調査委はその後、追加された教授Cに関する調査は行わず、教授Bのみの調査結果を今年2月の教授会で報告した。しかし、調査の不備が指摘されるなどし、教授会は申し立てを同大理事会に委ねることに決めた。
これを受け、同大常務理事会は今年3月、常務理事3人(教職1人、信徒2人)、日本基督教団教会牧師1人、弁護士2人の計6人で構成される「ハラスメント問題特設委員会」を設置した。中立性や公正性を保つため、委員長は弁護士とし、関係者に対するヒアリングや事実認定は、委員の弁護士2と、補助者の弁護士2人のみに限定。他の委員は、弁護士による調査で問題点が認められた場合、その原因分析と再発防止策の策定などにのみ関与する形を取った。
調査報告書の要旨によると、特設委は学生Aがハラスメントとして申し立てた事案一つ一つを法的に検討。しかし、「いずれについても違法性は認められない」とした。一方、ガバナンス上の問題点と提言では、1)入学試験プロセスの透明性、2)学生に対する指導内容の整合性、3)議事録の不十分さ、4)ハラスメントに関する内規の見直し――の4項目を挙げた。
1)「入学試験プロセスの透明性」では、「合格時に何らかの条件が付される場合には、募集要項でその内容を明らかにするとともに、対象学生に対しては書面で条件の内容が伝達されることが必要」と指摘。2)「学生に対する指導内容の整合性」では、「学生の進路やプライバシーに関するもので重要性が高いと考えられる事項に関する指導については特に、方針を徹底することが望ましい」とした。
3)「議事録の不十分さ」では、「協議事項によっては記載内容が簡素すぎるため、事後的に議事についての質疑や決定事項について内容を検証することが困難な場合も存在する」と指摘。「神学研修志望枠の導入以後も引き続き召命感という概念的要素を入学試験において判定することに鑑みれば、面接時及び判定会議の議事録を作成することが望ましい」とした。
4)「ハラスメントに関する内規の見直し」では、ハラスメント調査委に理事会の構成員や外部識者ら教授以外を加えること、また調査手法や調査期間の見直し、調査結果に対する異議申し立てプロセスの追加などを行うよう求めた。
その上で、同大常務理事会は「この調査報告書の結果を真摯(しんし)に受け止め」、「教授会と共に学内の体制を改善していくことに合意」したという。同大は、この調査報告書を文科省に提出する予定で、希望する同大関係者に対しては、調査報告書全体を閲覧できる機会も提供する計画だという。