世界宗教者平和会議(WCRP)の第10回世界大会が20日、ドイツ南部リンダウの国際会議場「インゼルハレ」で開幕した。125カ国から宗教者ら千人以上が集い、日本からも正式代表5人を含む約40人が参加。開会式では、ドイツのフランク・ヴァルター・シュタインマイヤー大統領があいさつに立ち、「宗教は争いを正当化するものであってはならない。平和を実現するためのものであり、そうでなくてはならない。宗教は、人類の平和のために尽くすもの」と訴えた。
2013年のオーストリア・ウィーン大会以来6年ぶりの開催となる今大会のテーマは、「慈しみの実践:共通の未来のために――つながりあういのち」。ドイツ外務省やバイエルン州教育省なども協力する。WCRP日本委員会からは、理事長の植松誠・日本聖公会首座主教や、理事の庭野光祥(こうしょう)立正佼成会次代会長らが参加。庭野氏は、WCRPの国際共同議長も務めており、開会式では、同じく国際共同議長の一人で、カトリック教会ナイジェリア・アブジャ大司教のジョン・オナイエケン枢機卿と共にあいさつを述べた。
開会式ではまた、全長7・5メートルの彫刻作品「リング・フォー・ピース(平和のための輪)」が発表された。これは、世界中から集めた多種の木材を用いて、連続性を象徴する「メビウスの輪」を形作ったもので、永続的な宗教間平和への願いが込められている。開会式ではこのほか、子どもたちが諸宗教による祈りをささげ、ノーベル平和賞受賞者のジョゼ・ラモス・ホルタ東ティモール元大統領が、積極的平和のビジョンを語った。
基調発題では、東方正教会のコンスタンディヌーポリ総主教バルソロメオス1世と、WCRP国際共同議長でムスリム社会における平和推進フォーラム会長のシェイク・アブドラ・ビンバイヤ氏、WCRP国際委員会のウィリアム・ベンドレイ事務総長がスピーチ。そして、シャンティ・アシュラム代表で国際共同議長の一人でもあるビヌ・アラム氏が、信仰に基づいた誓いを発表した。
午後には、宗教別会合、全体会議、分科会が行われた。このうち全体会議は「つながりあういのち」を共通テーマに、最終日の23日まで連日行われ、宗教指導者やNGOの代表、国連の上級代表らが計4回にわたって意見を交わす。期間中は特別セッションや地域別会合も行われる。
開幕前日の19日には、女性事前会議と青年事前会議も開催された。最終日には、大会中の議論を踏まえ、宣言文が採決される予定。WCRP日本委は開催に先立ち、「リンダウ宣言へ向けた日本からの提言」を宣言文起草委員会に提出している。そこでは、1宗教施設が1難民家族を受け入れることや、核廃絶の最大の壁だとして核抑止論を否定すること、持続可能な開発目標(SDGs)達成のための国際連帯税を実施することなど、15項目にわたる提言をしている。
第10回世界大会の模様は、WCRP日本委の公式サイトに設置された特設ページで随時更新される。
WCRPは、1970年に発足した諸宗教の連帯によって平和活動を推進する国際組織。国連経済社会理事会(ECOSOC)に属し、99年からはNGOの最高資格である総合協議資格を取得している。現在、世界90カ国以上にネットワークを持つ。70年に京都で開かれた第1回世界大会が、WCRPの正式な設立につながった。一方、WCRP日本委は72年に日本宗教連盟の国際問題委員会を母体として発足。2012年からは公益財団法人として活動を展開している。