世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会(東京都杉並区、杉谷義純理事長)は9日、北朝鮮が6日に行った核実験に対して「深く憂慮し強く反対を表明する」とともに、「さらに世界の平和と安全のために、全ての核兵器が廃絶されることをあらためて訴える」とする声明を発表した。
同委員会は声明で、今回の核実験は「これまで国際社会が懸命に築いてきた核軍縮・核不拡散体制に対する挑戦とも言うべきものであって、北東アジアの国々に不信を増長させ、不要な対立を生み出すものであるだけでなく一層深刻化させるものである」と指摘。「さらには二度と原爆・水爆の誤りを犯してはならないと悲惨かつ非人道的な被爆体験を語り続けている被爆者の平和への願いを踏みにじるだけでなく、核廃絶を願う世界の多くの人々の良心を裏切る行為である」と非難した。
その上で、「今回の核実験は、北朝鮮自身の国際的孤立化をさらに深めさせ、ひいては国の経済に重大な損失をもたらし、自国国民に対し死活的な困難とさらなる犠牲を強いるものであり、私たちは宗教者として深い危惧を禁じ得ない」と懸念を表明。「さらに倫理、人道に反し存在が悪とも言える核兵器を所有しながら北朝鮮の核実験を非難している核保有国に対しても、あらためてその矛盾した姿勢を改めるよう指摘するものである。これを契機に核保有国こそ本当に平和を願うなら一日も早い自らの保有する核兵器も含めて廃絶への行動を起こすべきことを強く要請する」と訴えた。
さらに、「北朝鮮を取り巻く国々が、自国の利益を優先する立場から、北朝鮮の核開発の進展を看過してきた危険性にも言及したい。関係国は自国の利害を超えて真の北東アジアの平和に寄与する方策は何か、新たな外交関係の構築に努力されんことを希望する」と述べた。
同委員会は今回の北朝鮮による核実験に対し、重ねて次の五つの願いを強く訴えると述べた。
- この度の核実験は、「他者と共に生きる歓び」を信条として平和な世界の実現を目指すWCRP関係者のみならず宗教者の立場から到底、容認し得ないものであり、国連はじめ、関係諸国は互いに協調を重視しつつ、可及的速やかに適切な措置を講ずること。
- 世界の各国政府は、この度の北朝鮮の核実験の強行に対し過剰な反応に走ることなく、対話による事態打開に向け、冷静かつ忍耐強くさらなる努力を続けること。
- 北東アジアの非核化を目指す6カ国協議ならびに核不拡散条約(NPT)の対話の場に北朝鮮が復帰するように促すこと。
- 世界のメディアは、事態に対する冷静な判断と報道に努め、世界の市民間に憎悪と対立が助長されることを抑止すべきであること。
- 世界の各国政府は、今回の核実験を傍観することなく、核兵器の例外なき廃絶の実現に向けて、核兵器禁止条約の早期締結に尽力し、世界の非核化の実現に努めること。
最後に同委員会は、「私たち日本の宗教者は、世界90カ国をつなぐWCRP国際ネットワークと連帯し、国連諸機関および平和を希求する世界のNGO団体と協力し、平和に対する深い祈りと粘り強い対話を通じて事態の解決に努めることを誓い、あわせて私たちの願いを国際世論に強く訴えるものである」と結んだ。