3つの教会を含む計8カ所が狙われたスリランカの連続爆弾テロは、死者数が25日までに253人となった。被害を受けた3つの教会は、2つがカトリック教会で、1つはプロテスタント教会だった。しかしその後の報道で、プロテスタント教会はもともとのターゲットではなく、別のカトリック教会で計画が失敗したため狙われたことが分かった。また、犠牲となった一人の男性信徒が自爆犯を入り口でくい止めたことで、被害が最小限に抑えられたことも明らかになった。
テロの被害に遭ったプロテスタント教会は、スリランカ東部バティカロアにあるシオン教会。教会のウェブサイトなどによると、スリランカ自由教会連合に所属するカリスマ派の教会で、1974年に中部キャンディーにあるライトハウス教会の枝教会として設立された。
爆発のあった21日朝は、イースター(復活祭)の礼拝のために多くの人が集まっており、爆発は礼拝が始まってすぐの午前9時ごろに発生した。自爆犯を含む29人が死亡し、このうち14人が日曜学校に通う子どもたち(少年7人、少女7人)だった。また大人2人はいまだに身元が特定されておらず、DNA鑑定による確認が行われている。
スリランカの英字日刊紙「デイリー・ミラー」(英語)によると、自爆犯は最初、シオン教会から約50メートル離れたところにある聖マリア大聖堂を襲撃する計画だったとみられる。周辺住民が、午前8時半ごろにこのカトリックの大聖堂を訪れる不審な人物を目撃しており、大聖堂の司祭も事件前日に周辺をうろつく不審な人物を目撃していた。
大聖堂では通常、午前7時半からミサを行っているが、事件当日はイースターであったことなどから、30分繰り上げて午前7時からミサを始めた。ミサには約千人が参加したが、自爆犯とみられる不審な人物が訪れたときには、すでにほとんどの人がミサを終えて帰っていた。そのためその人物は、近くにあったシオン教会へ向かったという。
シオン教会の牧師の一人、ガネーシャムーシー・ティルクマラン(クマラン)氏(48)は同紙に次のように語った。
「カバンを肩に掛け、またもう一つのカバンを抱くようにして持つ男が、牧師室の近くに立っているのに気が付きました。男に誰なのか、なぜそこに立っているのかを尋ねました。男は、教会で何をやっているのかを見に来ただけだと答え、教会について尋ねてきました」
クマラン氏によると、男は中背の30代くらいで、幾つかの質問をした後、自身は近くのオダッマバディという町から来たと説明。また、イスラム圏の典型的な男性の名前である「ウマル」を名乗った。
「教会を初めて訪れる多くの人たちと同じだと思い、私は男を教会に招き入れました。まったく疑いを持ちませんでした」
クラマン氏は、この日は別の教会で説教する必要があり、礼拝によく来ていた男性信徒にその男を任せ、妻と一番下の娘と共にシオン教会を後にしようとした。
しかしその男性信徒は、男が話す内容やその表情から疑いを持ち、男を一旦教会の外に出した。男は教会内に強引に入ろうとしたが阻まれ、教会の入り口付近で自爆。当時は、日曜学校のクラスを終えた子どもたちが教会の外で軽食を食べており、その多くが爆発に巻き込まれた。クラマン氏の息子もその1人で犠牲となった。
教会内には当時、イースター礼拝のために450~500人ほどが集っており、男が教会内で自爆していた場合、さらに多くの犠牲者が出た可能性がある。男を入り口でくい止めた男性信徒はこの爆発で亡くなっており、彼の犠牲が多くの命を救った形となった。
英公共放送BBC(英語)によると、亡くなった男性信徒は建築業を営むラメシュ・ラジュさん(40)。妻のクリシャンティニさん(40)は日曜学校の教師で、当時ラメシュさんや日曜学校の子どもたちと共に教会の外にいた。男は、カバンにはビデオカメラが入っており、礼拝者を撮影したいと話したという。
「夫は何かおかしいと感じ、最初に(教会内で撮影する)許可を取る必要があると告げ、男を教会の外に出しました」
その後、クリシャンティニさんは教会内に入ったが、そのすぐ後に大きな爆発音が聞こえた。教会内はパニックとなり、クリシャンティニさんは自身の子ども2人を連れて一旦避難し、近くの病院をめぐってラメシュさんを探した。そして数時間後、ラメシュさんの遺体を見つけた。ラメシュさんは、クリシャンティニさんが最後に見たその場所で、ほぼ即死の状態だったという。
翌22日には、身元が特定された26人の葬儀が行われた。ラメシュさんの葬儀には、その犠牲に敬意を払い、地元警察関係者も参列した。
ハナニャ・ナフタリさんは21日夜、散乱したシオン教会内部の写真と共に、日曜学校の教師の一人であるキャロリン・マヘンドゥランさんのコメントをフェイスブックでシェアした。
「今日は教会でイースターの日曜学校が行われました。私たち(教師)は子どもたちに、『みんなの中でキリストのためなら死んでもいいと思う人はいる?』と聞きました。すると全員が手を挙げました。そのほんの数分後、子どもたちが大人の礼拝に参加しに来たときに爆発が起こりました。そして、子どもたちの半数がその場で亡くなりました」
米フォックス・ニュース(英語)によると、ナフタリさんは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相のソーシャルメディア副相談役を務める人物だという。
ナフタリさんは、「バティカロアの現地の人によると、この教会はイスラエルのために毎週祈ってくれていました。あなたが宗教的かどうかにかかわらず、これは本当に恐ろしいことです。すべての人が安全に礼拝の自由を享受できるべきです」と続けた。