ナイジェリアで、少なくとも32人のキリスト教徒が殺害される事件が発生した。過激な遊牧民族として知られる「フラニ族」の犯行とみられる。
報道によると、襲撃は2月26日早朝、ナイジェリア中部カドゥナ州マロで発生。多くの人命が失われただけでなく、複数の民家と少なくとも教会1棟が焼き討ちに遭い、数百人の住民が避難した。放火された民家には、就寝中の住民も数人いたという。
ウィニング・オール福音教会(ECWA=旧・西アフリカ福音教会)の宣教部門「福音宣教協会」(EMS)の責任者を務めるバカリ・イブラヒム牧師は、モーニングスター・ニュース(英語)に次のように話した。
「カドゥナ州の平和のためにお祈りください。フラニ族の過激派の襲撃で数百人が家を失い、数百人が殺害されました。私たちは安全のために、EMSの子どもたち約100人を、事件現場に近いクファナから避難させました」
住民のモルデカイ・フノム・イブラヒムさんによると、午前6時ごろ、約400人のフラニ族の武装集団がマロ周辺の村々を襲撃したという。襲撃時、現地の教会ではECWA所属の女性グループが集会を行っていた。
女性の1人は次のように語った。「銃撃が続く中、私たちは教会の建物から逃げ出しました。多くの人が殺されました。私は朝から家族に会っていません。私がその地域から避難したからです」
英ガーディアン紙(英語)によると、カドゥナ州のサミュエル・アルワン知事特別補佐官は襲撃について次のように語った。
「カドゥナ州政府は本日、カジュル地方自治体統括地域および近隣のカチア地方自治体統括地域において新たに発生した襲撃について、治安機関から説明を受けました。州政府は、治安機関が襲撃を阻止するために懸命な努力をしていると確信しています。われわれは今回の襲撃に心を痛めており、容疑者を非難します。また、地域住民の保護に取り組んでいる治安機関を支援するよう、地域の全住民に要請します」
ナイジェリア・キリスト教協会(CAN)カドゥナ州支部は事件を非難する一方、現地の若者たちに対しては、暴力で応酬しないよう注意を呼び掛けた。
「襲撃者たちはその後逃亡し、民家や教会は燃やされてしまいました。若者たちが名乗り出て、治安機関と共に周辺を警護し、平常の状態が取り戻されました。私たちはこの地域の若者たちに、決して報復してはならないと訴えました。私たちは、殺人者掃討の是非を州内の治安部隊に委ねたいと思っています。私たちはいかなる報復攻撃も望んでいません。暴力や命の奪い合いは繰り返されるものだからです」
フラニ族は、その多くがイスラム教徒とされる。近年はこうした虐殺行為が増加傾向にあり、イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」と同様に懸念されている。今回襲撃があった地域では、約2週間前の2月10日にもフラニ族による襲撃があり、キリスト教徒10人と胎児1人が殺害され、5人が負傷した。
10日の襲撃で家族5人を殺害されたという21歳の男性が、モーニングスター・ニュースに語ったところによると、フラニ族の大集団はその日の午後11時ごろに村を襲撃した。
「銃声が聞こえたため、私と家族は寝室にとどまることを余儀なくされました。屋外に逃げ出すことは困難だったからです。フラニ族の武装集団は私たちの家を取り囲み、『アラー・アクバル(神は偉大なり)』と叫びながら銃を発砲しました。彼らは私の両親と2人の兄弟、義理の姉妹の1人を殺しました」
迫害監視団体「米国オープン・ドアーズ」の「ワールド・ウォッチ・リスト2019」では、ナイジェリアはキリスト教徒に対する迫害がひどい国の上位12番目にランクされている。昨年は、フラニ族の過激派により数千人が殺害されたという。