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コヘレト書を読む

コヘレト書を読む(12)「王」―平和の君― 臼田宣弘

2018年12月6日11時12分 コラムニスト : 臼田宣弘
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関連タグ:臼田宣弘コヘレトの言葉(伝道者の書)アドベント

教会暦では、12月2日からアドベントに入りました。イエス・キリストを神の子と信ずる者たちにとっては、信仰上とても大切な季節であることは言うまでもありませんが、街にイルミネーションがともされるなど、気持ちの上でもワクワクする季節に、今年もまたなったのだなあと思わされます。多くの教会の礼拝においては、アドベントに則した聖書の言葉から説教が語られると思いますが、よく語られる御言葉として、旧約聖書のイザヤ書11章を挙げることができます。

エッサイの株からひとつの芽が萌(も)えいで、その根からひとつの若枝が育ち、その上に主の霊がとどまる。知恵と識別の霊、思慮と勇気の霊、主を知り、畏れ敬う霊。彼は主を畏れ敬う霊に満たされる。目に見えるところによって裁きを行わず、耳にするところによって弁護することはない。弱い人のために正当な裁きを行い、この地の貧しい人を公平に弁護する。その口の鞭をもって地を打ち、唇の勢いをもって逆らう者を死に至らせる。正義をその腰の帯とし、真実をその身に帯びる。(イザヤ11:1~5)

アドベントによく歌われる「エッサイの根より」(『讃美歌21』248番)の歌詞になっている箇所でもあります。イザヤがこの預言を語ったのは、アッシリアという大国の軍事的強大さが示された紀元前8世紀後半であるといわれます。そのような時代に、イザヤは一人の「平和の君」について語ったのです。ここに示されていることが、イスラエルにおける王の理想の姿であるといわれています。王は軍事的に強大になることよりも、主を畏れ敬い、弱い人たちのために正当な裁きを行い、貧しい人を公平に弁護する者でなければならないのです。

イザヤより数百年後に記されたコヘレト書では、王をテーマにした内容や、あるいは王が登場するお話が、しばしば語られます。コヘレトの時代は、プトレマイオス王朝という他国の強大な王の政治によって、イスラエルは抑圧的に支配されており、イザヤが語ったような王を見ることはできませんでした。コヘレトはそのような時代にあって、預言者たちが伝えていた理想の王の姿を語っていたのだと、私は理解しています。

さてそれでは今回の学びに入ります。コヘレト書の4章13節~5章8節(新改訳などは4章13節~5章9節)は、4章17節~5章6節(同5章1~7節)を囲い込むインクルージオ(囲い込み)構造になっていると考えています。

4章13~16節:テーマ「王」(囲い込んでいる部分)
4章17節~5章6節:テーマ「神殿祭儀」(囲い込まれている部分)
5章7~8節:テーマ「王」(囲い込んでいる部分)

この構造のうち、今回は囲い込んでいる両側を取り上げます。ここでのテーマはまさしく王です。プトレマイオス王朝という強大な王政の元で、王の本来あるべき姿を、コヘレトが示していたことが読み取れます。

13 貧しくても利口な少年の方が、老いて愚かになり、忠告を入れなくなった王よりも良い。14 彼は王国に貧しく生まれ、牢(ろう)から出て王となった。15 太陽の下、命あるもの皆が、代わって立ったこの少年に味方するのを、わたしは見た。16 民は限りなく続く。先立つ代にも、また後に来る代にも、この少年について喜び祝う者はない。これまた空しく、風を追うようなことだ。(4:13~16、新共同訳、14節のみ聖書協会共同訳パイロット版)

7 貧しい人が虐げられていることや、不正な裁き、正義の欠如などがこの国にあるのを見ても、驚くな。なぜなら、身分の高い者が、身分の高い者をかばい、更に身分の高い者が両者をかばうのだから。8 何にもまして国にとって益となるのは、王が耕地を大切にすること。(5:7~8、新共同訳 新改訳などは5:8~9)

「貧しくても利口な少年の方が、老いて愚かになり、忠告を入れなくなった王よりも良い」とあります。たとえ王であっても、忠告を受け入れなければ、王の地位を追われ、後の者に地位を奪われることが示唆されています。第7回で書いたように、ソロモン王の子レハベアム王も長老たちの忠告を聞かなかったため、北イスラエルを失うことになったのです。

コヘレトは、王たる者は耕地を大切にしなければならないと語ります。王として耕地を大切にするということは、人々の食糧を考えるということであり、すなわち国民を大切にするということでありましょう。貧しい人が虐げられ、不正な裁き、正義の欠如などがあることは、国の常であるかもしれません。しかし王は、預言者イザヤが語ったように、「主を畏れ敬い、弱い人たちのために正当な裁きを行い、貧しい人を公平に弁護する者」であるべきことを、コヘレトが求めていたのではないかと思うのです。コヘレトは、貧しくて利口な少年が牢から出て王になり、人々がその少年に味方するのを見た、と語ります。少なくとも旧約聖書の中には、イスラエルにそのような王がいたことは記されていません。コヘレトが一つの像を述べているのかもしれません。

しかしコヘレトは同時に、「先立つ代にも、また後に来る代にも、この少年について喜び祝う者はない。これまた空しく、風を追うようなことだ」とも語ります。どんな理想的な王が立っても、この世の王は相対的なものなのです。では、相対的なものではなく、真に大切なことは何なのか。次回インクルージオの中央部に、それを見いだしたいと思います。同時に、イザヤの預言の成就である「平和の君」イエス・キリストの誕生の出来事を、この季節心から待ち望みたいと思います。(続く)

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◇

臼田宣弘

臼田宣弘

(うすだ・のぶひろ)

1961年栃木県鹿沼市生まれ。80年に日本基督教団小石川白山教会(東京都文京区)で受洗。92年に日本聖書神学校を卒業後、三重、東京、新潟、愛知の各都県で牧会。日本基督教団正教師。2016年より同教団世真留(せまる)教会(愛知県知多市)牧師。

※ 本コラムの内容はコラムニストによる見解であり、本紙の見解を代表するものではありません。
関連タグ:臼田宣弘コヘレトの言葉(伝道者の書)アドベント
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