同じキャンパスの中で生活を共にしていますと、文化も言葉も背景もまったく異なる者同士でも、大家族のようになってきます。誰かが病気になればできるだけの励ましを与え、経済的にも支援し合います。つらい過去を引きずって入学してきたような学生たちも、いつしか気持ちが癒やされていくようです。
週末ともなれば絶えずお互いに食事に招待し合って、交流を深めていきます。1年に何回かは、教師、学生、スタッフが一緒にピクニックを楽しんだりもします。クリスマスともなれば盛大なディナーを用意して、各国のクリスマスソングを歌ったり、ゲームをしたりして、心から楽しみます。
まさに「喜ぶ者と共に喜び、泣く者と共に泣く」といった深い絆が生まれてきます。そのような絆は、学生たちが卒業してそれぞれの国に帰って行った後も続いていきます。
妻と私は、学期中の目の回るような忙しさが一段落するときに、いつもクラスの学生たちを自宅へ招いて食事を共にし、彼らの労をねぎらうことにしていました。写真は、妻のクラスの学生たちを自宅に招いたときのものです。学期末試験も終わって皆リラックスしているところです。こういった機会を通して、教師と学生たちは一段と深い絆を築いていきました。普段、授業の中だけでは見せない顔を見ることができます。
学生たちは時々、驚くようなことをします。ある朝の5時ごろのことでした。家の窓の外から、なにやら歌声が聞こえてきます。眠い目をこすりながら窓を開けてみると、なんと10人ほどの学生たちが、まだ明け切らぬ空の下でギターを手に歌っているのです。
「一体これは何事だろう、こんな朝早くから」と考えていたら、彼らは「ハッピバースデーツーユー」と歌いだしました。妻に「今日はあなたの誕生日だから、きっとお祝いにきてくれているのよ」と言われて、初めてその日が自分の誕生日だったことに気が付いたのでした。
学生たちは私が好きな賛美歌を知っていて、次々と歌ってくれるのです。ある男子学生は、私が最も好きな「一羽のすずめ」という賛美歌を、ソロでギターを弾きながら歌ってくれました。学生たちが、にこにこしながら朝早くから私どもの家の窓辺にまで来て、私の誕生日のために歌ってくれている姿を見ているうち、いつしか私たちのほおに熱いものが伝っていきました。
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