太宰治は聖書をよく読んでいたことが知られています。さて、「己を愛する如(ごと)く、汝(なんじ)の隣人を愛すべし」は彼がよく用いた聖句です。何書の何章の言葉でしょうか――。
聖書に関わるさまざまな問題に答えて競い合う「聖書クイズ王決定戦」の「グランドチャンピオン大会」が11日、東京・銀座で開催された。聖書に親しんでもらおうと、日本聖書協会が4年前から開催してきた企画。今回は各地で行われてきた地方大会の勝者が集う全国大会で、神学校のOB・OGによるチームなど強豪がそろう中、親子3人による「テレマカシ・イエスス」(神戸大会優勝チーム)が優勝した。
大会には3人1組の全11チームが参加し、予選、準決勝、決勝とトーナメント方式で戦った。出題形式は「4択」「ビジュアル」「早押し」「聖書早引き」「筆記」の5つ。この内「聖書早引き」は、出題者が聖書のある箇所を2節だけ読み、回答者がそれに続く節を探し出すというもの。今年5月にチェコで開催された世界大会で用いられた形式で、日本では今回初めて使われた。
出題された問題は、「ハンナが幼いサムエルを預けた司祭は誰?」「箴言1章によると、主を畏れることは何の初め?」など初歩的なものから、「北王国の王アハブがアラムと戦争をしたとき、アラムはイスラエルの神を何と呼んだ?」「ソロモン王が神殿を建築したとき、徴用した男子は何人?」など、聖書を細部まで読んでいなければ答えられないものまでさまざま。
優勝した「テレマカシ・イエスス」でひときわ活躍したのが、高校2年の梶原恵生(さとき)さん。6歳の時、マンガ聖書に出会ったことがきっかけで熱心に聖書を読むようになった。日本聖書協会からも出版されている漫画家・ケリー篠沢さんによるマンガ聖書シリーズや、いのちのことば社出版の『まんが聖書物語』、約30年前に小学館とフランスのラルース社が共同で出版した「聖書―Color Bible」シリーズなどを愛読しているという。
恵生さんの家族は、和泉市にあるいずみグレースチャーチに通っている。教会にインドネシア人の短期留学生が来ていることからインドネシア語に興味を持ち、インドネシア語で「ありがとう、イエス様」を意味する「テレマカシ・イエスス」をチーム名にした。
恵生さんは歴史が大好きで「歴史を学びながら聖書に、聖書を学びながら歴史にという感じで、分からないことがあれば喜んで調べる」(父・鉄也さん)という。優勝した感想を尋ねると「今まで勉強してきたすべてを出し切れてよかったです。神様に栄光です」と話してくれた。
惜しくも2位となったのは、日本福音教会連合所属の男性3人による「神のみことばは喜び、力」(神奈川大会優勝)。「最悪でも2位までは絶対食い込むつもりでした。早押しで2点失点したのが悔やまれますが、これも主の御心でしょう」とコメントした。3位となった東京神学校のOB・OGによる「東京神学校Aチーム」(東京大会優勝)は「不勉強で残念でした。またこういう機会があればやりたいです」と語った。
聖書のクイズ大会は、海外でも多くの国で開催されている人気企画。特にアジアや中南米で活発で、参加者が千人を越えるものもあるという。日本聖書協会はこれまで、聖書普及活動の一環として全国各地でコンサート「聖書と音楽の出会い」を開催しており、「聖書クイズ王決定戦」はその後続企画。クイズの専門家からもアドバイスをもらうなどして始めた。参加人数は出場者と関係者に限られることが多く、「聖書と音楽の出会い」と比べて減ったものの、日本聖書協会の渡部信総主事は本紙に対し「メディアを通して伝わることで、皆さんが興味を持ち、聖書を読むきっかけになれば」と語った。
今年の世界大会は、チェコの上院議会ホールを会場に行われ、9カ国から代表が参加した。渡部総主事は審査員として参加しており、この日は冒頭、世界大会について報告。クイズの問題は各国語に翻訳されて出題されるものの、筆記形式がメインで正確に答える必要があり、優勝するには問題全体の9割程度正解しなければ難しいと、肌で感じた世界のレベルを語った。日本からは、恵生さんと神奈川大会3位チームの男性1人、日本聖書協会スタッフ2人の計4人によるチームで出場したが、決勝進出はならなかった。渡部総主事は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を念頭に、日本で世界大会を開催したいと意気込みを語った。