日本カトリック司教協議会社会司教委員会(委員長・浜口末男=大分司教)は15日、安倍晋三首相と河野太郎外相に対し、昨年7月に国連で採択された「核兵器禁止条約」への署名と批准を求める要望書を発表した。同条約に最初に署名した50カ国にバチカン(ローマ教皇庁)が含まれていることなどについて触れ、「核兵器禁止と対話に基づく平和外交に後ろ向きな日本政府の姿勢に対して強く抗議」するとしている。
備蓄や威嚇としての使用なども含め、核兵器の全廃と根絶を目的とした同条約は昨年7月、米ニューヨークの国連本部で開かれた会議で、国連加盟の3分の2近い122カ国・地域が賛成し採択された。しかし、米英仏露中などの核保有国に加え、北大西洋条約機構(NATO)加盟国や米国と同盟を結ぶ日本や韓国など「核の傘」の下にある国々は、同条約に反対し会議自体に参加しなかった。
同委は、こうした日本政府の姿勢について「唯一の戦争被爆国でありながら、広島・長崎の被爆者の思いをも無視」したと批判。また、同年11月に日本政府が国連総会に提出した「核兵器廃絶決議案」については、同条約について一切触れられておらず、前年の内容から大きく後退したと指摘した。
その上で、「日本政府は『核軍縮』よりも核保有国を容認し、自らも軍備を増強しながら、米軍中心の軍事による『安全保障』に追随する姿勢を世界に示していると言わざるをえません」と指摘。「核抑止論の立場を取り続けることにより、万一、実際に武力衝突が起きた場合の破滅的な結果を、日本政府はどれほど客観的に検討しているでしょうか」と訴えている。
バチカンでは昨年11月、核兵器廃絶を目指す国際会議が開かれた。同委によると、ローマ教皇フランシスコは会議で「核兵器は見せかけの安全保障を生み出すだけ」「核兵器の使用による破壊的な人道的・環境的な影響を心から懸念する」などと表明した。同委の要求事項は下記の通り。
- 日本政府が核兵器禁止条約に署名・批准すること
- 核保有国に対して、この条約への批准を働きかけること
- 日本政府が国連に提出した「核兵器廃絶決議案」を修正し、核兵器禁止条約に言及し、これを成立させた世界の市民社会と被ばく者の方々に敬意を表すること
- 日本国憲法の平和主義に則り、対立を深める今の世界にあって、武力による緊張を高めるのではなく、国際的な対話による平和構築に貢献すること