バチカン(ローマ教皇庁)で10、11の両日、核兵器廃絶と軍縮をテーマにした国際シンポジウムが開催された。7月に国連で核兵器禁止条約が採択されたことを受けて開催されたもので、国連関係者や米露韓などの外交代表、歴代のノーベル平和賞受賞者ら約200人が参加した。ローマ教皇フランシスコが演説したほか、日本からも被爆者の代表が参加し、核兵器の非人道性などを訴えた。
バチカン放送によると、10日に演説した教皇は、あらゆる核兵器について、その破壊性から何らかの誤りで爆発する危険性なども考え、使用だけでなく所有自体も断固として非難すべきだと語った。また、国際関係は武力によっては統治できないとし、核兵器などの大量破壊兵器は偽りの安心感を生むだけで、人類の平和的共存の基礎とはなり得ないと述べた。
日本の被爆者ら核の実際の被害者の声が、特に次世代に警告の声として届くことを願い、軍縮に向けた目標が厳しい現状にあっても希望はあるとし、多くの賛成を得て採択された核兵器禁止条約を歴史的出来事として高く評価した。そして、歴代教皇の回勅にも触れつつ「人類の統合的な発展こそが人類がたどるべき善の道」と語った。
11日には、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)事務局次長の和田征子(まさこ)さんが演説した。74歳になる和田さんは1歳10カ月の時、長崎で被爆した。NHKによると、和田さんは「かろうじて生きながらえてきた被爆者の苦しみは深く、今なお続いています」と述べ、「核兵器は放射能の被害を長年にわたってもたらす非人道的な兵器です」などと訴えた。また、核兵器禁止条約の採択を評価し、核保有国や「核の傘」の下にある日本などに条約の署名を呼び掛けた。
シンポジウムには、今年のノーベル平和賞受賞者に決まった国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長も参加した。教皇に接見した際には、授賞式が行われる12月10日に、核の脅威を終わらせるため、世界中の教会で祈りをささげてほしいと求めたという。
ニューヨークの国連本部で7月7日に採択された核兵器禁止条約は、核兵器の全面的な撤廃を定める条約で、国連加盟の193の国と地域のうち、124の国と地域が条約交渉会議に参加し、122の国と地域が賛成した。9月20日から条約への署名が開始され、同日に国連本部で行われた署名式では50カ国が署名。署名国は各国の議会などの承認を得て、批准のための手続きを行い、条約は50カ国が批准してから90日後に発効する。
条約交渉会議には、米英仏露中などの核保有国に加え、北大西洋条約機構(NATO)加盟国や米国と同盟を結ぶ日本やオーストラリア、韓国など「核の傘」の下にある国々は、条約に反対し不参加だった。一方、バチカンなど3カ国は署名が始まった9月20日の時点ですでに批准もしている。