核兵器を法的に全面禁止する「核兵器禁止条約」の交渉会議が行われている米ニューヨークで、世界宗教者平和会議(WCRP / RfP=Religions for Peace)日本委員会などは25日、同会議に先駆け「核兵器禁止条約提言ハンドブック」を発表した。同条約の必要性などを訴えるもので、交渉に関わる各国政府関係者に渡すほか、世界の宗教指導者に配布し、各国の政治指導者に対して条約制定を促していくという。
ハンドブックは、WCRP日本委や同国際委が、NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)と合同で、交渉会議に対し宗教者や市民社会の声を届けるために作成した。核兵器の非人道性アプローチの有用性や禁止における法的拘束力の必要性を訴え、開発から生産、実験、取得、貯蔵、委譲、配備、使用、威嚇まで、核兵器の全面的な禁止を提言している。
WCRP日本委の杉谷義純(ぎじゅん)理事長(天台宗宗機顧問)はハンドブックの意義について、「市民一人一人が核兵器禁止条約の重要性を理解し、さまざまな市民による多角的アプローチが展開され、条約成立へ向けた動きが大きなうねりとなることを期待する」と述べている。
交渉会議はニューヨークの国連本部で27日に始まり、31日に終了する。今回が同条約をめぐる初の交渉会議で、次回は6月15日〜7月7日を予定している。第1回会議の参加国は115カ国を超え、NGOなどからも220人以上が参加しているが、米英仏中露などの全ての核保有国と、米国の「核の傘」の下にある同盟国などは欠席。初日の27日には、米英仏など約20カ国の代表が議場外で交渉会議を非難する会見を開いた。
唯一の戦争被爆国である日本はこの議場外での会見には同席しなかったが、高見沢将林(のぶしげ)軍縮大使が27日、議場で演説をし、「建設的で誠実な形で交渉に参加することは困難だと言わざるをえない」(NHK)などと述べ、不参加を表明した。
一方、交渉会議の議長を務めるコスタリカのエライネ・ホワイト・ゴメス大使は30日、交渉は建設的に進んでいるとし、第2回会議が終わる7月7日までに条約文が完成するという楽観的な見方を示した。
WCRP日本委らによるハンドブックは英語で、PDFでも公開されている。5月には日本語にも翻訳される予定だという。同委の篠原祥哲(よしのり)平和推進部長は「国際的な市民社会を代表するNGOであるICANと連携し、これまでWCRPが訴えてきた核兵器禁止条約の必要性をより具体的に提示した。このハンドブックを有効活用し、核兵器廃絶への道のりを確かなものにしたい」と話している。