キリスト教精神に基づいて世界の子どもたちを支援する国際NGO「ワールド・ビジョン・ジャパン」(WVJ、東京都中野区)は、シリア危機から7年となった15日、教育を通じて難民・移民の子どもに対する暴力撤廃を目指すキャンペーン「Take Back Future ~難民の子どもの明日を取り戻そう~」を、今年から4年間の計画で実施することを発表した。
2030年までに子どもに対する暴力を撤廃することが、国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)で採択され、暴力撤廃に向けた動きが世界的に強まっている中、このキャンペーンは「激動する世界の中で、最も弱い立場に置かれている子どもたちのために挑戦し続けていこう」という設立30周年を迎えたWVJの決意表明でもある。キャンペーン名の「Take Back Future」には、「現状のままでは失われてしまいかねない、子どもたちの未来を取り戻そう」という決意を込めている。
現在、世界の難民・移民の子どもの数は5千万人。そのうち紛争のために避難を強いられている子どもは2800万人に上る。子どもたちは、移動する過程で人身取引や性的搾取、児童労働、子ども兵士としての徴用など、多くの暴力の危険にさらされている。また、移動を余儀なくされる子どもたちの多くが教育を受けられていない。十分な教育を受けられずに育った子どもは、人身取引などの暴力に遭うリスクが高いという調査結果も報告されている。
世界で難民として認定を受けている学齢期(5~17歳)の子ども約640万人のうち、 半数以上の約350万人がさまざまな理由で教育を諦めざるを得ず、学校に通っていない。
WVJは、難民発生国トップ3のシリア、アフガニスタン、南スーダンのすべてで支援活動を行っており、中でもシリア、南スーダンの難民発生に対応した子どもたちへの教育支援に力を入れてきた。この経験を生かし、まずは難民の子どもが暴力から守られること、難民の子どもが健やかに成長し、暴力が繰り返されない未来を築いていけるようになることを目指す。
ヨルダン国内でシリア難民を多く抱える地域の公立学校の多くは、急増する難民の受け入れに対応するために2部制を導入している。午前はヨルダン人、午後はシリア人が学習しているが、半日授業では十分な学習とは言えず、取り残されて中退する子どもが増えている。WVJは、ヨルダン北部でシリア難民を多く受け入れている地域の小学生たちが継続して学習できる環境を整えるため、▽補習授業の支援、▽子どもの保護を強化する活動の2つを軸にして活動している。
また、長期休みには、普段は別々のクラスで学習しているシリア人とヨルダン人の子どもたちが一緒にレクリエーション活動に参加し、互いの民族に対する差別意識を解消できるよう配慮している。
今後の取り組みとしては、▽難民の子どもに対する暴力への日本社会での関心喚起と行動促進、▽子どもに対する暴力撤廃および難民の子どもへの教育支援に関する政策変容、▽移動により高まる暴力のリスクから子どもを守り、暴力が繰り返されない未来を築く教育支援の拡充などを実施していく。
詳しくは、WVJのキャンペーンサイト。