キリスト教精神に基づいて世界の子どものために人道支援を行っている国際NGO「ワールド・ビジョン・ジャパン」(WVJ、東京都中野区)が、10月で設立30周年を迎えた。13日には、中野坂上ハーモニーホール(同)で設立記念の「キックオフイベント」を開催。理事の三木晴雄氏(玉の肌石鹸〔せっけん〕株式会社会長)が記念のせっけん1万個をWVJに寄贈し、親善大使である歌手のジュディ・オングさんと女優の酒井美紀さんが受け取った。
設立当初からWVJの働きを支えてきた三木氏はあいさつで次のように語った。「どんなに良いせっけんを作っても、人の心まできれいにすることはできません。30年前からWVJの働きを見守ってきましたが、本当に素晴らしい。皆さまからお預かりしているお金をこんなに丁寧に、大事に役立てているNGOは他にありません。WVJのこれからの働きにささやかでも支援ができれば、私の心がきれいになることにもつながると思います」
2007年にインド、17年にフィリピンの支援地を訪れた酒井さんは、日本からの寄付が現地の子どもたちの支援に確実につながっていることを肌で感じたという。「このような活動は、行動を起こせばすぐに変わるというものではなく、根気のいる時間のかかることですが、まだまだ必要があると実感しています。これからも微力ですが、頑張りたいと思います」と語った。
またオングさんは、毎月数千円の支援をした子と手紙や訪問で交流を深められる「チャイルド・スポンサーシップ」の働きを広めるため、次のように訴えた。「人にとって『これだけあれば幸せ』というのがあります。それ以上の幸せを、私は『幸せのボーナス』と呼んでいます。そのほんの一部を誰かと分かち合う。それは私たちにとって一部ですが、もらった人は大きな幸せをもらうことになります。これからも、子どもたちの可能性を開くために、共に歩んでいきたいと思います」
イベント最後には、募金などで協力している都内のフリースクールに通う子どもたちとWVJのスタッフが、30周年を記念して作られた公式ソング「“何か”はきっとできる」を初披露。三木氏、オングさん、酒井さんも加わり、来場者と共に大合唱してフィナーレを飾った。
その後、街頭で記念せっけんのプレゼント会も行われ、小雨が降る中、親善大使の2人も自ら街頭に立ち、先着100個のプレゼントはわずか約15分でなくなった。寄贈されたせっけん1万個は、来年9月までの1年間、WVJ主催のイベントに参加した人やチャイルド・スポンサーシップの新規申込者などにプレゼントされる(詳細はこちら)。
ワールド・ビジョンは、米国人宣教師のボブ・ピアス(1914〜78)により50年にオレゴン州で設立された。第2次世界大戦後に混乱をきわめた中国に渡ったピアスが、「すべての人々に何もかもはできなくとも、誰かに何かはできる」と考え、中国で出会った1人の少女を支援したのが設立のきっかけだった。その後、朝鮮戦争により両親を亡くした子や夫を亡くした女性、ハンセン病や結核患者にも救いの手を差し伸べ、60年代には日本の子どもたちにも支援を届けた。
今日、国連経済社会理事会公認の国際NGOとして、約100カ国で、宗教や人種を超えたすべての子が健やかに成長できるよう、特に貧困や紛争、自然災害の中で苦しんでいる子どもに対し包括的な支援を行っている。日本事務所であるワールド・ビジョン・ジャパンは1987年に設立され、現在30カ国で活動している。