太平洋に浮かぶ島国、バヌアツの農家が生産したカカオ豆が世界トップ50にランクインし、国際的な賞にもノミネートされた。ランクインしたのは、キリスト教の国際開発慈善団体「ワールド・ビジョン」の経済開発プログラムを通じて訓練を受けた農家だった。
ジョージ・モリーさん(44)は、誉れある「ココア・オブ・エクセレンス」プログラムで、自分のカカオ豆が選ばれたことを知り、喜びの涙を流して神に感謝した。このプログラムは、ココアやチョコレートの主原料となるカカオ豆を世界中から集めて審査し、品質の良いトップ50を発表するもので、選ばれれば「国際ココア賞」の受賞候補としてノミネートされる。今年は世界40カ国から166人が参加した。今回の結果に励ましを受けたジョージさんは、これで家族を養っていけると話す。
「この知らせを聞いたとき、これで自立できるという思いが私の中に生まれました。もう誰からも支配されずにすみます。自立する前は依存の繰り返しでしたが、今は自立してやっていけると確信しています」
モリーさんは、ワールド・ビジョンの「サンマ州地域経済開発計画」(SCED)を通して訓練を受けた。SCEDは、バヌアツ北部サンマ州における作物の品質と生産高の向上を支援している。
「私はこのプロジェクトを高く評価しています。このプロジェクトのおかげで、本当に考え方が変えられ、自信を持てるようになりました。昨年は農園にあるカカオの木を100本剪定(せんてい)しました。今年は270本剪定しましたから、もっと多くの収穫を期待できます。剪定率が倍以上になったのです。これはプロジェクトのおかげです」
モリーさんの妻モニークさんは、ワールド・ビジョンの働きと夫の成功のおかげで、子どもたちの学費の支払いが楽になると話す。
「このプロジェクトがなければ、私たちの生活は今のようにはなりませんでした。今、私たちの日々の糧は、カカオの収入で賄われています」
ワールド・ビジョンの復興生計技術顧問を務めるアダム・トゥロー博士は、「(モリーさんは)ワールド・ビジョンがバヌアツで協力している自慢の農家で、周囲からもとても尊敬されています。彼は持続可能な農法のお手本です。モリーさんは、SCEDを通じて知識やスキル、市場への出品方法を学び、カカオ豆のバイヤーとの直取引関係を強化しました。また、いずれ国際的なバイヤーになる人たちとの関係も強化しています」と語った。
「モリーさんは、自分の農園を島の農民の実地訓練の場として立ち上げしました。彼は定期的に他の農家を訓練し、農法や加工技術の向上方法を学ばせています。最近は、自分の種苗場から取れた200余りのカカオ苗を農民たちに提供しました」
9月には、モリーさんのカカオ豆を含め、トップ50に選ばれたカカオ豆がチョコレートに加工され、専門家による味覚テストを受ける。そしてこの中で最も優秀なカカオ豆を作った人に「国際ココア賞」が贈られる。受賞者は10月中旬に発表され、表彰式は同30日にパリで行われるチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」で行われる。
世界約100カ国で活動するワールド・ビジョンは、1980年代初頭にバヌアツでの活動を開始。現在は、教育や職業訓練、収入創出プロジェクトなどを、国内の4州で行っている。