国連は、「世界難民の日」の20日、世界の難民が、第2次世界大戦後最多となる6530万人規模に達するとする統計を発表した。
キリスト教の救済団体を含む全世界の人道団体は例年、世界難民の日に合わせ、厳しい環境の中、乏しい食糧で生き延びることを余儀なくされている難民たちの現状や経験を共有する催しを行っている。
世界各国の子どもを支援する活動を行っているキリスト教団体「ワールド・ビジョン」は、同団体が作成した「難民のお母さんのやることリスト」の中で、「子どもたちは眠りにつくと、過去に経験した出来事を夢に見てうなされます」と話す、1人の名もない母親を紹介している。
「農地が数カ月前に爆撃され、夫は死にました。3人の子どもと私は、夫の遺体を見つけました。子どもたちを守り慰めてあげたくても、私は絶望に陥ってしまいます。子どもたちが実際に見たことを見ないことにすることなどできないからです」と、その母親は言う。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報告では、2015年末の難民または国内避難民は6530万人で、14年と比べると500万人増加した。これは今や地球上で113人に1人が難民または国内避難民ということになる。
難民は世界中で起こっているさまざまな紛争に端を発している。シリア、アフガニスタン、そしてソマリアからの難民が全体のほぼ半数を占める。それぞれ近隣諸国、つまりトルコやパキスタン、レバノンが受け入れ国になっている。
イラクとシリアの内戦やテロから逃れてきた100万人を大きく超える難民は、その多くが15年に欧州に流入した。その結果、欧州大陸では強硬な政策や国境警備についての論争が起こるようになった。
国連難民高等弁務官のフィリッポ・グランディ氏は、人道主義的支援の必要性が高まる一方で、難民に対する排外主義も台頭しつつあると警告する。「今日の欧州で懸念されている排外主義の雰囲気を醸成しているのは、難民や避難民に反対する世論をかき立てている人々だ」と、グランディ氏はAFP通信に語った。
ワールド・ビジョンは世界難民の日に際し、統計上の数字に圧倒されやすいが、重要なのは援助を必要としている子どもたちやその家族の本当の姿だと指摘している。
「長引く危機的状況の中で大事なのは、子どもたちに教育を確実に施してあげることです。結局、子どもたちには将来があるのですから、読み書きができるようにならなければならないのです。しかし、緊急対応基金の2パーセントしか教育に回されていません」と、ワールド・ビジョンは言う。
全世界でキリスト教徒の迫害を監視している団体「オープン・ドアーズ」は、キリストを信奉する人々がその信仰の故に迫害の標的とされており、その中には難民危機におけるもっとも弱い人々が含まれていると指摘している。
過激派組織「イスラム国」(IS)のようなテロ集団は、他の過激組織と共に、キリスト教徒を100万人規模で祖国から追い出している。03年にはイラクには約200万人のキリスト教徒がいたが、今では数千人しかいないとされている。
ISは、シリアでの紛争が始まって以来、760万人のキリスト教徒を強制退去したとしており、さらにその地域から全てのキリスト教徒を追放してカリフ国家を樹立すると警告している。
オープン・ドアーズは、「われわれは、20年以上この地域に留まり、迫害されているキリスト教徒たちと関係を密にしながら、彼らが自分たちの共同体にイエス・キリストの福音を携えていけるようにしています。他の団体の多くはこうした危機的状況が長丁場になるとは予想せず去ってしまいましたが、オープン・ドアーズは長期間ここに留まる態勢が整っています」としており、難民たちが何を必要としどのように援助がなされるべきかについての情報も提供している。