米国の現職大統領が毎年参加する国家朝餐祈祷会が8日朝、首都ワシントンのホテル「ワシントン・ヒルトン」で開催された。今年で66回目の開催で、演説を行ったドナルド・トランプ大統領は、神に対する信仰の重要性を強調。「神の恵みに目を開き、神の愛に心を開く限り、米国は永遠に自由の地であり、勇者の故郷であり、すべての国々に対する光となる」と語った。
「米国民が自身の信仰を公に話すことに確信を持ち、子どもたちに何が正しいかを教えるとき、家庭は栄え、地域社会は活性化し、わが国はあらゆることを成し遂げることができる」
トランプ氏は、米国の公式標語「In God We Trust(われわれは神を信じる)」や、米国の「忠誠の誓い」の中に出てくる「under God(神の下)」といった言葉に言及し、「われわれは、その歴史を通して神の摂理の物語を見ることができる」と、米国の宗教的遺産について称賛した。
「われわれの権利は人によって与えられたものではない。われわれの権利は創造主から来る。何であれ、これらの権利を取り去るいかなる力はない」
「それ故、ワシントン記念塔には『神に賛美あれ』という言葉が刻まれており、そして、わが国民の心にも同じ言葉が刻まれている。だから今日、われわれは、米国民として本当に祝福されていることを神に賛美する」
国家朝餐祈祷会は1953年、ドワイト・アイゼンハワー大統領の時代に始まった。毎年2月第1木曜日に行われるのが恒例で、100カ国以上から、さまざまな国籍、宗教、政治的背景を持つ3千を超える人々が参加する。
準備・運営はキリスト教系のフェローシップ財団が行うが、主催は米国議会。下院議員が毎週行っている朝餐祈祷会の延長として行われ、今年は共和党のランディー・ハルグレン下院議員(イリノイ州)と、民主党のチャーリー・クリスト下院議員(フロリダ州)の2人が共同議長を務めた。
ハルグレン氏は「食べて、歌い、そして賛美と祈りの必要を分かち合う」と、毎週行っている祈祷会について説明。世代や宗教、背景がまったく異なる人々が参加するが、祈祷会の後にはいつも、互いに対する理解、協調性、一体感が深まると語った。
クリスト氏は、イエス・キリストが語った黄金律「人にしてもらいたいと思うことを、人にもしなさい」(ルカ6:31)が記されたリストバンドを、ある医師から手渡された話を紹介した。
「いつもこれを身に付けている。それは、このように騒がしく、対立し、そして時には激しく言い争う政治の世界で、すべての人々を、われわれが扱われたいと思う方法で扱いたいということを、自分自身に思い起こさせるためだ」
「皆さんが今日この場を去られるとき、イエスがわれわれに、どのように公正にまた慈愛深く生きるように願っておられるかを覚えつつ、この思いを携えていってくださることを願う」
祈祷会では毎年、主講演者によるスピーチがあり注目される。過去には、マザー・テレサ(1994年)や、U2のボノ(2006年)、トニー・ブレア元英首相(2009年)らがスピーチしている。昨年は、アフリカ系米国人としては初めて、またセブンスデー・アドベンチスト教会出身者としても初めて米上院のチャプレンに就任したバリー・ブラック氏が講演。今年は、昨年6月にワシントン郊外で銃撃され重傷を負った共和党下院議員のスティーブ・スカリス院内幹事が話した。
著名人としては、ホロコーストの記録保存を行う「サイモン・ウィーゼンタール・センター」(カリフォルニア州)の創設者でラビ(ユダヤ教の指導者)のマービン・ハイヤー氏、視聴覚障害者としては米国史上初めて現役将校となったスコット・スマイリー少佐らが出席した。