クリスチャンビジネスマンによるミニストリー「日本CBMC」が主催する第16回国家晩餐祈祷会が受難日の25日夜、「我らの市民権は天にあり」をテーマに掲げ、京王プラザホテル(東京都新宿区)で開催された。国会議員や財界人のほか、教団教派を超えた教職信徒ら580人が集まり、世界と日本の平和のため、また政治や経済、教育など、さまざまな課題のために心を合わせて祈りをささげた。ゲストには国務大臣の石破茂氏、メインスピーカーには東京基督教大学学長の小林高徳氏、音楽ゲストにはゴスペルシンガーの亀渕友香さんが主宰するクワイアー「The Voices of Japan(VOJA)」を迎えた。
開会に先立ち、日本CBMC理事長の近藤高史氏があいさつ。「十字架の金曜日の夜に晩餐会を開くとは、という声も聞かれた。十字架の苦しみを覚えるとき、私たちが飲み食いして良いのかという指摘はその通りだと思う。だが同時に、神は私たちが一つとなってへりくだり、一致して祈ることを望んでいてくださる。歴代誌第二7:14にも神の約束がある。まずクリスチャンが一致して祈ることが、全ての始まりではないか。晩餐であると同時に、祈祷会こそがここに集まった一番の目的だ」と話した。
キリスト教会カリスチャペルを創立した村上好伸牧師によって、全国の教会、牧師、信徒、国会、国のあらゆる分野におけるリーダーが祝福され、日本、アジア、世界の平和のために用いられるようにとの祈りがささげられた後、世界、そして日本各地から集まった人々の紹介がなされた。中国、フィリピン、韓国、ブラジルからも参加者があり、会の様子は数カ国語で同時通訳された。
来賓を代表して、日韓基督教議員連盟代表会長の金泳鎭(キム・ヨンジン)氏が「韓半島の統一のためにも覚えて祈っていただきたい」とあいさつした。晩餐後に行われた平和メダル授与式では、朝鮮半島平和統一国際推進委員会の委員長を務める金氏から近藤氏に、世界平和のために働く人に贈られる「韓半島平和メダル」(非武装地帯の鉄条網から出たサビと古い銃弾を溶かし固めて作ったメダル)が授与された。
また、イスラエルの失われた10部族の足跡を追って50年以上研究を続けているイスラエル国立大学、アリエール大学のアビグドール・シャハーン博士が「ユダの地、レビ族から失われた10部族を求めて旅をし、ここ日本にたどりついた。心から皆さんを愛している」とあいさつの言葉を述べた。
日本基督教団赤坂教会の姫井雅夫主任牧師による食前の祈りで晩餐が始められ、備えられた食事を囲みつつ、参加者は交わりの時を持った。
音楽ゲストとして招かれていた亀渕氏は、体調不良のため会場に足を運ぶことができなかったが、コメントが代読された。「ゴスペルは福音。誰も見ていなくても神様が見ている、誰も赦(ゆる)してくれなくても神様が赦してくださる。この世界を大きな愛で包んでくださる尊き主の御言葉は、若き人々の心を奮い立たせる。今こそ手に手を取り、皆が全身全霊でゴスペルを歌うときではないか」
約30年ゴスペルを歌い続けている亀渕氏が手塩にかけて育ててきたVOJAのメンバーがステージに上がり、黒人霊歌「Deep river(深い河)」など3曲を力強く披露し、晩餐に華を添えた。
元参議院議員の木俣佳丈氏が、米国で開催されている大統領朝餐祈祷会の参加報告を行った。80年の歴史を持ち、世界90カ国に広がっているCBMCは米国発で、1953年にアイゼンハワー大統領を招いて開いた大統領朝餐祈祷会が、全世界での国家朝餐(晩餐)祈祷会の始まりとなった。
4年連続で米国に足を運んでいるという木俣氏は、大統領朝餐祈祷会に出席する意義を「交流による心の高まりを求めるのではなく、心を静めてイエス・キリストを思い出すことにある」と話し、今年のゲストであったウクライナのティモシェンコ前大統領が「お互いに赦し合うこと」「信仰こそが恐れを超える力になる」とスピーチしたことを写真と共に報告した。
遅れて到着したゲストの石破氏は「政治家のパーティーでもこんなに人が集まることは少ない」と驚きの笑顔を見せ、前回の祈祷会同様、熊本バンドのメンバーで、新島襄らと共に同志社大学の創設に携わった曽祖父の金森通倫(みちとも)の逸話を披露し、祖父、母、そして石破氏自身と、4代にわたってクリスチャン信仰が受け継がれてきたことについて話した。
いつしか教会に足を運ぶのはイースターやクリスマスなど年数回になったが、幼い頃に聞いた聖書の話、特にザアカイの話、ファリサイ人と取税人の話などは不思議と心に残っているという。「政治家は自分が正しいと思っていなければやっていられない商売だ」と笑いつつ、それでも常に誤りがあるということを認め、「誤りを正してください、ご用のためにお用いくださいと祈れる幸いを覚えていたい」と語った。
聖書からのメッセージを語った小林氏は、フィリピ3:20、21から「我らの市民権は天にあり」と題して「主に従ってどのように生きれば良いのか」を話した。私たちクリスチャンは、御国の建設のためにこの地に遣わされている、天を首都とするキリストの植民地の統治者である。私たちが何を目指せば良いかは明確、真の救い主であるイエス・キリストの救いの御業にしっかりと抱かれつつ、イエスの行動を心に据えて思いを一つとすることだ、と語った。
祈祷の時間には、各課題ごとに代表者がステージに上がって祈りをささげた。日本の教会のためには、日本基督教団総会議長の石橋秀雄氏が、「教団教派には多くの違いがあるが、違いを受け止め合い、その違いに学びながら、教会に与えられた賜物を生かし合いながら、日本の伝道に取り組むことができるように。聖書を読んで、祈り、伝道することに、日本の教会が世界に率先して励むことができるように。キリストの十字架に集中し、キリストの平和をこの地に示すことができるように」と祈った。
子どもたちのため、次世代のためには、チア・にっぽん代表の稲葉寛夫氏が、「特に、大きく揺れ動いている教育行政のために祈りに覚えてほしい」と呼び掛け、「日本の子ども、父、母、その絆のために祈れることを感謝する。子どもたちに心をますます向けることができ、親たちの心が子どもたちに向き、ますます神に向くことができるように。子どもたちの魂を一つも地獄に送ることのないよう、働きができるように導いてください。救われるだけでなく、キリストの心が子どもたち、私たち一人一人に与えられ、次の世代へ福音を伝える者として遣わされていくように助けてください。聖書からの知恵が行政に与えられるように」と祈った。
日本の政治経済の指導者のためには、東京キリスト教学園理事長の廣瀬薫氏が、「人の救いのために示された十字架は、どこか空中に掲げられたのではなく、確かにこの地上に打ち立てられ、この地を癒やす力にも満ちていた。この世界の完成に至らせる働きに、クリスチャン一人一人を招いてくださったことに感謝し、神が喜ぶようにこの地を治め生かし、地上にあっても天国の民としての喜びに満ちた歩みをすることができるように。日本の政治、経済、教育、芸術、文化全てが本来の姿に生かされ、各分野のリーダーがさまざまな欲から解放され、神の器として使命を果たすことができるように」と祈った。
日本とアジアのリバイバル、隣国の一致のためには、CBMCアジア会長のキム・チャンソン氏が、「過去には不幸な歴史があるが、それらがこれからの和解のつまずきとなることがないように。私たちは神の偉大な愛と恵みによって、神の子とされた。互いに愛し合いなさいという、神の崇高な教えに私たちが従い、互いに祈り合い、譲り合う広い心が与えられるように。国家間にある葛藤をキリストの愛によって覆ってください。互いに助け合い、仕え合い、共に歩むことができるよう導いてください。日本とアジア、世界に主にあっての平和を与えてください」と祈った。
代表者たちの祈りに促された参加者は、立ち上がってそれぞれの言葉で祈りをささげ、最後には喜びのうちに「ハレルヤ」を賛美し、祈祷会は閉会した。