聖書から着想を得て作られた動画作品を表彰する「第2回聖書動画コンテスト・アワード」(主催:日本聖書協会)が8日、アバコクリエイティブスタジオ301st(東京都新宿区)で開催された。
昨年から始められた動画コンテスト。聖書から着想を得て作られた動画作品を募集したところ、初心者からプロまで両部門合わせて55作品の応募があった。その中から、スマートフォンやパソコンなどで簡易編集された30秒以上60秒以内の短い動画を対象とする「一般部門」7作品、本格的な編集が施された3分以下の動画を対象とする「クリエイティブ部門」10作品がノミネートされた。
審査委員長を渡部信氏(同協会総主事)、審査委員を東裕之氏(太平洋放送協会宣教協力部広報)、黒部美穂氏(聖光学院中学校高等学校聖書研究会講師)、江原有輝子氏(日本基督教団阿佐ヶ谷教会伝道師)の3人が務めた。ノミネート作品17作品が上映された後、両部門の賞が発表され、表彰式を行った。さらに、惜しくも選外となった作品を対象に、両部門1作品ずつ、来場者による投票で特別賞も選ばれた。
このコンテストが始められたのは、渡部氏がポルトガル聖書協会主催「ビブリアム・ムーブ(聖書動画)表彰式」に参加しことがきっかけ。多くの若者が集まり、聖書を題材としたユニークな作品を作り、それらをインターネットを通して公開し、さらにフェイスブックやツイッターなどのSNSを使って効果的に発信しているのを渡部氏が見て、日本にもこのような旋風を起こしたいと思ったと、開会のあいさつで語った。
まず、一般部門の7作品が上映され、佳作2作品と優秀作品賞が発表された。優秀作品として選ばれたのは、Haction!!!Project さんによる「狭い門から入りなさい」。聖書を読む中で抱いた疑問を胸に探求の旅に出た男の物語だ。審査員の東氏は、「私の今日の採点でもぶっちぎりでした。アイデアも面白く、とても丁寧に作られていた」と絶賛した。
北海道で活動する Haction!!!Project さんは昨年も、力いっぱい一心不乱に踊る男性の姿が撮った「ダビデダンス踊ってみた」で会場の笑いを誘い、佳作に選ばれている。「まさか優秀作品賞として評価してもらえるとは思っていなかったので、非常にうれしい。北海道を舞台にいい景色を撮りたいと、いろいろな場所を探して撮影してきた。最終的には、クリスチャンとしての日常こそ『狭い門から入れ』なのだというメッセージを入れたかったが、それができなかったのが残念」と、次回へのチャレンジの気持ちものぞかせた。
途中、音楽ゲスト杉山優子氏と木下裕美氏によるバイオリンとピアノによるミニコンサートを挟み、クリエイティブ部門10作品が上映された。今回、同部門では最優秀作品賞は該当なしということで、優秀賞が3作品選ばれた。また、作品賞としてスマイル賞とアイデア賞がそれぞれ発表された。
優秀賞に選ばれたのは、柳義賢(ユ・イヒョン)さんの「エレミヤ29:11」、堀江正(ほりえ・まさる)さんの「キッズ・デボーション『どうして悪いことが起きるの?』」、そして、ことのほさんの「『私は』―神のみことばに生きる―」。
「エレミヤ29:11」について渡部氏は、「私たちに直結するメッセージ性が入っていた。カメラワーク、ストーリー性、そこに入る言葉、ナレーション、ミュージックと、とても良かった。来年は最優秀を目指してほしい」と期待を寄せた。
受賞した柳さんは、日本に住んで10年。ミッションスクールの音楽教師として、学校の「ユーチューブ部」の部員たちと一緒に作ったという。同作品は、「自分はなぜ生きているのか。私たちに将来と希望を与えようとする神様の心を聖書から知ってほしい」という思いで作られた。「キリスト教を信じていない人にぜひ見てもらいたい」と柳さん。
「『私は』―神のみことばに生きる―」について黒部氏は、次のように評価した。「自分がこの世からいなくなったときにどんな言葉、どんな証しが残るかということは、死に向かって生きる私たち一人一人に突き付けられている問い。そういう意味で、神の御言葉を考えるきっかけになる。皆さんの心に波紋を投げ掛ける作品だ」
この日欠席したことのほさんは、受賞を知らないままメッセージを寄せた。「今回は初めて応募。聖書の言葉をそのまま生きていくのではなく、生きていく中で自然と神の御言葉に生きていることに気付くことが、御言葉に生きることなのかと感じます。皆さんと動画を通して、そのことを分かち合えることに感謝しています」
「キッズ・デボーション『どうして悪いことが起きるの?』」の作者である堀江さんは、日本語による子ども向けディボーションアニメ制作を志し、現在、カナダ・バンクーバーに家族と住んでいる。本作では、ヨブ記の神様の言葉を、アニメーションのかわいらしい絵で分かりやすく伝えている。表彰式には代理人が登壇した。
特別審査賞には、福田涼奈さん(山梨英和中学校)の「誘惑」と聖隷クリストファー高校放送部の「朝の掃除人」が選ばれた。
総評の中で、今回は票が割れたため、選定に苦労し、僅差でそれぞれの賞が決まったことが伝えられた。いろいろな撮影機能のあるアプリを使ってスマホで手軽に動画が撮れるようになったことにより、さまざまな面白い映像が作り出されていることに、審査委員の中で感心の声が上がった。一方、全体的に音楽の使い方が貧弱だったことも指摘された。映像も音楽も最大限に生かし、人の五感を刺激して、心震わせる魂に届くものを作ってほしいと、次回へのさらなる飛躍が呼び掛けられた。
最後、東氏が「初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった」(ヨハネ1:1)から、次のように締めくくった。「神ご自身が人間に愛を伝える言葉になった。私たちもますます動画という言葉で神様の愛を伝えることができるよう励まし合っていけたら」
同協会は今後もコンテストを継続して開催していく予定で、3回目は3月から募集を開始する。問い合わせは同協会(メール:[email protected])まで。