「宗教改革500周年ゲームコンテスト」(キリスト新聞社主催)の結果発表が14日、行われた。優秀賞を受賞したのは、「砂漠のキタキツネ」さん作「宗教改革者たち」。このゲームは、プレーヤーがルターやツヴィングリなどの「改革者」となり、「聖書の翻訳」「説教」などを通じて信者らの支持を得て、「異端」との誹(そし)りをかわしながら、「宗教改革」を遂行していくというもの。同作は、グラフィックやルール調整などの手を加えて商品化され、2017年10月31日(宗教改革記念日)に合わせてキリスト新聞社より発売される予定。
「バイブルハンター」など、聖書を題材にしたゲーム「聖書コレクションシリーズ」を販売してきたキリスト新聞社は、宗教改革500周年をテーマにしたアナログゲームの公募を昨年11月頃から開始し、3月13日の締め切りまでに全国から18作品の応募があった。そのうち、クリスチャン以外からの応募が半数よりやや多かったという。年齢層はさまざまで、牧師、教会などの他、研究者や大学のゼミからの応募もあった。優秀賞に輝いた「砂漠のキタキツネ」さんは関西在住のクリスチャンではない男性。
審査を行ったのは、日本キリスト教会浦和教会牧師の三輪地塩氏(同シリーズの監修も担当)、「Ministry」「キリスト新聞」編集長の松谷信司氏、ブロガーの橋谷利幸氏、ゲームデザイナーの中村誠氏の4人。各審査員の選評コメントは次のとおり。
三輪氏「私の選考基準は、第一に『宗教改革の香り』です。該当作品は、16世紀の宗教改革運動の香りがしっかりと漂う〝コアな層〟にも十分満足できる硬派なものに仕上がっています。第二に『高い倫理性』です。該当作品は、ある一方を糾弾するようなことがなく、ここに高い理性を感じ取りました」
松谷氏「そもそも『宗教改革』が教会外でどれだけ認知されているのかと不安でしたが、歴史に詳しい一般のゲーマーさんや『公募ガイド』誌を含む各種メディアからも予想を超える反響が寄せられ、その影響力の大きさに驚かされました。『聖書コレクション』シリーズはこれまで、どちらかといえば『キワモノ』扱いされがちなネタゲー(まあまあ面白く、話の種になるゲーム)と見られてきましたが、優秀作の『宗教改革者たち』は、マニアの期待にも応え得る骨太なガチゲー(プレーヤーの実力に左右されるゲーム)としてのポテンシャルを持っています」
橋谷氏「今回の審査で私は、歴史的解釈の具現化を重視しました。ことに『宗教改革たち』はこの点に優れ、当時のプロテスタント陣営が直面していた混迷と緊張が、ゲーム的な技巧により簡明に表現されていました。史実の諸相を盤上で描写する力は、本作が応募作の中で最も精彩を放っていたと思います。また、安定した遊びやすい内容となっていました」
中村氏「今回の審査員中、私は唯一のノンクリスチャン(非信徒)ということで『信者でなくても宗教改革に興味を持てるゲーム』という観点で審査を行いました。『宗教改革者たち』は、宗教改革の歴史上の人物やイベントを盛り込み、宗教改革をなぞることのできるゲームでした。さまざまな行動を勝利点で表すことで、さまざまな勝ち筋を示し、『if(架空)の宗教改革』を介在させる余地を持たせています」
宗教改革は、贖宥状(しょくゆうじょう)を買うことで罪の赦(ゆる)しが与えられるとする当時のローマ教会に抗議して、1517年10月31日、マルティン・ルターが「95カ条の論題」を教会の扉に掲示したことから始まったとされる。このことがきっかけで、プロテスタントとカトリックが分裂した。ルターが論題を発表してから500年目を迎える今年、全国各地の教会、キリスト教系の教育機関では、さまざまなセミナーや講座、勉強会が行われている。