ユーチューブのチャンネル登録者数が1万人を超え、初ライブを行った昨年以降、急成長している若きクリスチャン・シンガーソングライターの Kenta Dedachi さん(17)。透き通る甘い歌声と、屈託のない少年のあどけなさが残る笑顔に魅了されるファンも多い。
Kenta さんの父親は千葉市にある福音派の牧師。いわゆるPK(パスターズ・キッズ)だ。2歳年上の姉を筆頭に、Kenta さんを含め8人きょうだい。現在は、県内にあるクリスチャンの子どもが通うインターナショナルスクールで学んでいる。
Kenta さんと、プロデューサーの TAKAKI さん(事務所シルバートランペット)に話を聞いた。
――チャンネル登録者が1万人を超えましたね。
Kenta:本当にびっくりしています。ユーチューブって全世界から見ることができるので、日本国内だけでなく海外からも反響があるのはうれしいことです。南アフリカから僕の歌を聴いてコメントをくれたり、地元のラジオ局からも「この曲を使っていいか」なんて聞かれたりしました。
――牧師の子であることについて、今、思うことは?
Kenta:生まれてからずっと、聖書の言葉や賛美歌はいつも僕の周りにありました。それは僕にとって日常。むしろ、これ以上の恵みはありません。クリスチャンの少ないこの国の中で、そもそも牧師自体が少ないのに、その子どもが僕であるということは・・・。中には教会から離れる人がいるって聞くけど、僕の場合、教会が大好きで、離れようと思ったことは一度もないです。だから、そんな環境に自分がいることは本当に感謝なことだなと思っています。
――Takaki さんもPKですよね。
Takaki:僕の場合は Kenta 君とはまったく逆ですね。中学から高校にかけて人生も教会も何もかも嫌になって、家出したこともありました。一晩中、海にいたことも。1人で祈っていたんです。祈りというよりも神様と戦っていたんですね。もちろん勝てるわけないんですが、それでも神様と対話していました。その後、教会を離れた時期もありましたが、米国にある福音派のバイオラ大学に留学しました。聖書や神学のことも小さい時から頭にたたき込んであったはずなのに、どこか合点がいかないことが多かった。しかし、何年か前にイスラエルを訪れた時、今まで父から聞いた聖書の話、バイオラで学んだことなどが、パズルのピースが組み合わされるようにぴったりとはまったのです。「これか、僕が生涯をかけて聞いてきた言葉は。神様がいるってこういうことか」と。今はメシアニックジューの教会に通っています。
――Kenta さんとの出会いは?
Takaki:僕の父親と Kenta 君のお父さんは同じ教団の牧師なんですよ。ですから、お父さんのことは何となく知ってはいたのですが、たまたまSNSで Kenta 君の歌を聴いて、「この子は魅力的な声の子だな」と思ったのがきっかけで、昨年の夏くらいに声を掛けました。家も同じ沿線上で、同じPKで、長男だけど上に姉がいるといった共通点もあって(笑)、不思議なめぐり合わせというか、導きを感じましたね。
――「シルバートランペット」という事務所について教えてください。
Takaki:民数記10章の2本の「銀のラッパ」が集合と出発を知らせたように、終わりの時代に異邦人とイスラエルが互いに協力しながら音を出すことで、音楽だけでなく、さまざまなことを発信し、多くの皆さまに「気付き」を与える存在でありたいと思い、立ち上げました。現在のところ、所属アーティストは Kenta 君と、最近加わった shiohikari(シオヒカリ)、ちるうたの3組です。shiohikari は、京都市立芸術大学音楽学部作曲専攻を首席で卒業した北あおいと、同じく同大管・打楽器専攻を首席で卒業した藤田ももによるユニットで、2人ともクリスチャンです。ちるうたは、jun、yuyu、noemi の3人によるボーカルユニットで、国際基督教大学(ICU)に通う現役女子大生です。彼女たちもPKですね(笑)。
――Kenta さんはいつごろ信仰告白を?
Kenta:確か小学5年生くらいだったと思います。その時は、周りもみんな信仰告白をしているし、父も勧めてくれたしみたいな感じでした。周りがみんなクリスチャンだから、僕も当然クリスチャンになるものだと思っていました。でも当時、自分が生まれながら罪人であるとか、そういったことはあまり理解していませんでした。本当に神様に近付きたいと思い始めたのは、今から2年くらい前。だんだんいろんな世界を見るようになり、同時に自分の弱さも見えるようになってきた頃、もっと神様と共に歩みたいと思えるようになりました。
――音楽との出会いは?
Kenta:聖書と同様、音楽もいつも僕の周りにありました。両親は大学時代、合唱部にいたので、歌が大好き。きょうだいが多いので、家庭礼拝や賛美をする時にハーモニーを作ったりするのは日常的にやっていました。僕にとって家族での賛美が原点。ギターも、父からコードを教えてもらって、あとはユーチューブなどで見よう見まねで覚えました。和音にしても、コードの運びにしても、僕の耳には小さい時から家族で歌っていた賛美のハーモニーが焼き付いているんですよ。だから、特別に勉強はしていませんが、何となく曲が書けちゃうのだと思います。
――家族の影響は大きかった?
Kenta:はい。それと、学校や教会に先輩がたくさんいて、ギターを弾いてワーシップリーダーをしている姿がとてもカッコよく見えたんです。「自分もあんなふうになりたい」って思える人がそばにいたのは感謝でしたね。今度は自分がそんな存在になれるようにと思って、今は学校で後輩にギターを教えています。この子たちもいつか教会でワーシップリーダーのような存在になってくれたらうれしいと思っています。
――ユーチューブで動画配信しようと思ったきっかけは?
Kenta:5年くらい前、学校の友達がユーチューブをやっていたのを見て、「僕も音楽ならできるかな」と思ったことはありました。米国のクリスチャンユーチューバーの中にも、一般の歌を歌いながら、その人の生き方や生活の中で証しをしている人たちがいて、それはすごくカッコいいなと思っていたんですよ。ワーシップより一般の歌のほうが多くの人が見てくれ、そこから聖書の言葉を伝えたいなと。でも、歌っているうちに、「これが本当に僕のやりたいことなのかな」という葛藤があって、今はワーシップと一般の歌を混ぜながらアップしています。
――ユーチューブで自分を表現するって、どんな気持ち?
Kenta:ユーチューブって本当に不思議なんですよね。たくさんの人が見ていてくれると思いますが、目の前にはカメラしかないので、あまり緊張しないというか。僕は、見てくれているほとんどの人のことを知らないわけじゃないですか。だから、あまりプレッシャーがないんです。不思議ですよね。
――家族の反応は?
Kenta:ユーチューブを始めてすぐの頃に僕の誕生日があって、父から「プレゼントに何がほしい」って聞かれので、「マイク」って言ったんですよ。「何に使うの」って不思議そうな顔をするので、「ユーチューブにアップする時に使うんだ」と言ったら、けげんな顔をされたんですよね。その時はちょっと、へこみました(笑)。
――それから説得を?
Kenta:自分が何をしたいかを説明することにしたんですよ。今の時代は、動画を含むインターネットの情報って何でもタダ(無料)で、世界中どこからでも見ることができるじゃないですか。その場所に「いいもの」を僕は載せたい。「いいもの」っていうのは、僕にとっては福音だったんですよ。インターネットの世界って、誰にでもアクセスできるし、それって本当にすごいことだと思うんですよね。一人一人とは深くつながれないかもしれないけど、「種まき」というか、「地ならし」くらいはできるんじゃないかと思っているんですよ。そんなことを説明したら、父も分かってくれて、今は応援してくれています。
――Takaki さんが Kenta 君と一緒に仕事をしたいと思ったのは?
Takaki:牧師に限らず、クリスチャンの2世、3世って、当然、親の世代とはまったく違う。すでに別のミッションを持って生まれてきているわけです。僕はクリスチャンとして、一般社会で生きていける子を育てていきたいと思っています。Kenta 君は毎週、1人できちんと動画を作って、コンスタントにそれをアップするという継続的な努力をしています。そういうところは高く評価しています。
――Kenta さんの一番の魅力は何ですか。
Takaki:やはり声質ですね。その質というのは、一般にいう「いい声」というのとも違っていて、彼の性格、信仰などすべてが詰まったもので、曲を一節歌えば会場がいっせいに静まる圧倒的なものを持っている。彼はとにかくブレない強さがあり、何より真っすぐなところは魅力ですね。
――初めてライブをやった時の感想は?
Kenta:初ライブは、確かお茶の水クリスチャン・センターでやったフライデーナイトですが、来てくださった方がほとんどクリスチャンだったので、いつも教会でワーシップリーディングする時のように、リラックスしてできました。しかし、中野のライブハウスで演奏した時は、初めての「アウェー」、一般社会の場だったので、ものすごく緊張したのを覚えています。酔っぱらっている人もいたのですが、みんな「君の歌、最高だよ」と言ってくれて、とてもうれしかったです。神様が僕を使ってこの人たちにも福音を伝えさせてくれたら最高だなと思いました。
――1パーセントのクリスチャンの中にいて、これから99パーセントの世界に飛び込まなければいけません。
Kenta:正直、怖いですね。今まで本当に僕は守られてきて、教会の中で育ち、学校でもクリスチャンに囲まれて、小さな風船の中にいたので、外の世界をあまり知らないのです。そこに飛び込んでいくのは怖いけど、神様が共にいて導いてくださるのを待てば、その怖さもなくなるのかなと思っています。それから、音楽を通して壁を越えられる気もしています。
――10年後の自分は想像できますか。
Kenta:27歳ですね。結婚してるかな(笑)。全然想像つきませんね。Takaki さんと会ってこの1年で、僕には想像できないことがたくさん起きました。いろいろな人と会わせてもらって、いろいろなところに連れていってもらって、いろいろな経験をさせてもらいました。だから、この10倍のことが10年間で起きると思うと、楽しみでしょうがない。もちろん、神様は僕に試練を与えるでしょう。でも、それさえも感謝できる自分でいたいですね。
――Takaki さんは?
Takaki:Kenta 君のいいところは、「歌もやりたいけど、他のことにも興味がある」という振れ幅があるところ。音楽にしろ、映像にしろ、それはツールでしかなく、大事なのは、それを使ってどう証ししていくか。これからも一緒にいろんなことができる子だと思っているので、パートナーとして世に出て行くことに期待しています。
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