イスラエル北部のガリラヤ湖西部で、初期の教会において女性が重要な役割を果たしていたことを示す1600年前のモザイク製の碑文が発見された。碑文は教会の会堂建設のために献金した人の名を記したもので、その中に女性の名前もあったという。初期の教会における女性の役割については神学的な議論もあり、碑文の発見はそうした議論に一定の影響を与える可能性もある。
イスラエルのオンライン新聞「タイムズ・オブ・イスラエル」(英語)によると、発見されたモザイク製の碑文はギリシャ語の5世紀ごろのもので、そこには会堂建設の献金者の1人として「ソーサン(Sausann)」(へブライ名でショシャナ=Shoshana)という女性の名が記されていた。
同紙は「家父長制社会では珍しく、献金者のソーサンという女性の名が、配偶者や男性の保護者とは別に単独で記されている。このソーサンという名前は、恐らくイエスの女性従者スザンナ(Susannah)にちなんだもので、一定の地位があったと考えられる」と伝えている。
スザンナは、ルカによる福音書8章3節で「自分の持ち物を出し合って」イエスや弟子たちを助けた女性の1人として描かれている。
イスラエルでは今夏、ビザンツ(東ローマ)帝国時代の3つの教会の発掘現場から、7つの碑文が発見されており、今回の碑文はそのうちの1つ。発掘調査を指揮したガリラヤ考古学キネレット研究所のモティ・アビアム上級研究員は、独立した女性が教会に献金したことは、当時のガリラヤの社会構造を知るための手掛りになると言う。
調査にはさまざまな分野の専門家が協力しており、同地域における4〜5世紀のキリスト教徒の生活様式を浮き彫りにしようと取り組んでいる。
碑文の長さは5メートルに及び、ビザンツ帝国時代に教会が分裂する原因となったイエスと母マリアの神性に関する論争についても触れている。
アビアム氏は、石器や硬貨は考古学者に当時の歴史の一部を垣間見せるが、碑文はありのままの歴史をつづった書物のようだと話す。「いつ誰が教会を建てたのか、教会内にどのような階層があったのか、また寄付者の名前など多くの情報を伝えています」