ロシア正教会のモスクワ総主教キリルが10月26日、ルーマニア正教会を訪れ、信者らに友好の手を差し伸べた。ロシア正教会のトップであるモスクワ総主教がルーマニアを訪問するのは、1962年のアレクシイ1世(1877〜1970)以来で、旧ソ連崩壊後では初めて。
ロシアとルーマニアの間には文化や宗教の結び付きはあるものの、1989年に東西冷戦の象徴だったベルリンの壁が崩壊してからは、関係が冷え込んでいた。西側との結び付きを強めたルーマニアは、2004年に北大西洋条約機構(NATO)、07年に欧州連合(EU)に加盟しており、現在、国内には米国の弾道弾迎撃ミサイルが配備され、NATOの弾道ミサイル防衛システムの一翼を担っている。
キリル総主教はルーマニアで、両国共通の価値観や「平和に向けた計り知れない可能性」について述べ、次のように語った。
「正教会の価値観は、ルーマニア人やルーマニアにとって同じであり、ロシア人やロシアにとっても同じです。そして他のすべての正教会の信者にとっても同じです。人は価値観さえ共通していれば、互いに良き関係を築けます。たとえ歴史がいかなる道に進もうとも、別々の国に住んでいる私たち正教会の信者は、互いが同じ価値観や共通の生活様式を持っていることを忘れてはなりません。それは、平和と協力と交流に向けた計り知れない可能性があることを意味しています」
27日には、首都ブカレストの守護聖人聖ディミトリウスの祝宴を祝うために集まった信者らを祝福し、「今日ここに集まる多くの信者の皆さんとお会いでき、うれしく思います。皆さんの献身は、こんにちルーマニア正教が繁栄していることを証ししています」と述べた。また、キリストも神もない地上天国を約束する政治的偽教師や宗教的偽教師を避けるよう勧めた。