日本への原子爆弾投下を承認した大統領として知られる、ハリー・S・トルーマン(1884~1972)。上院議員、副大統領を歴任し、フランクリン・ルーズベルトの急死により大統領に昇格しました。若い頃に南部バプテスト連盟の教会で洗礼を受けていたトルーマンは、このように語っています。
「山上の垂訓は私たちに生き方を教え、そしていつか人は現実的な生き方としてそれを理解するだろう。すべての道徳的な規範の土台は、『何事でも、自分にしてもらいたいことは、ほかの人にもそのようにしなさい』(マタイ7:12)。あなたがしてほしいと思うことを、人にしてあげなさい」(『100人の聖書』110ページ参照)
ここから分かるように、トルーマンも聖書の影響を受けていたのです。
さて、トルーマンについてですが、複数の方々より「なぜ、トルーマンを?」とのお声を頂いています。つまり、「トルーマンは日本に原子爆弾を投下することを承認した人物である。それなのに、なぜ彼を『100人の聖書』で取り上げたのか?」というご意見です。
同じようなご意見が、ブッシュ元大統領のことでもきていますが、確かにトルーマンもブッシュ氏も戦争に関わっています。特に、トルーマンは私たちの国である日本に原子爆弾を投下する承認を下した大統領として知られていますから、いろいろな方(ご年配の方が多いと思います)から、お声を頂くわけです。ですから、今日のコラムでは私なりの思い、考えについても書かせていただきたいと思います。
まず、トルーマンが日本に対する原子爆弾投下の承認をしたといわれていますが、その通りだとします。また、ブッシュ氏が米国大統領としての第1期目をほぼ対外戦争に費やした方であることも知っています。
ですが、私の思い、考えでは、トルーマンもブッシュ氏も、私、そして皆さんと同じであるのです。まず、同じ人間です。そして、私が一番強調したい部分は、次のことです。
日本への原子爆弾投下を承認したトルーマン、そして私も、このコラムを読んでくださっている皆さんも、読んでいないすべての人も、同じ「罪を犯す人」(今までに何度も的外れなことをしてきたし、他人にも迷惑をかけて生きてきた)ということです。
いくらトルーマンが原子爆弾を投下する承認をしたといわれているからといって、彼だけを悪人呼ばわりするのはどうかと思うわけです。私も含めて誰でも罪を隠し持っているし、人には知られたくない部分があるはずです。公にはできない過去の秘密が1つもない人っているのでしょうか。
聖書は「義人はいない。一人もいない」と教えていますので、トルーマンや私だけでなく、100パーセントすべての人に、罪や悪い部分があるのですね。それは、人間なら誰だってよく分かっていることだと思います。
すべての人に罪があるし、すべての人に良い部分もある。だからこそ、自分にはトルーマンのことを、またブッシュ氏のことをとやかく言う資格はないのだと、私自身は考えています。
トルーマンにも良い部分があり、語り継がれるべき素晴らしい業績があります。私たちも、周りの人たちの「良い部分」「素晴らしい行い」に注目していければ、もっと良い人生を送ることができるようになるのではないでしょうか。批判的な目ばかりで人を見ていれば、自分もそんな目で見られるものです。
最後に、映画「君の膵臓(すいぞう)をたべたい」(主演は浜辺美波さん、北村匠海さん。小栗旬さん、北川景子さんも出演)の中で、主人公である余命わずかな女子高生桜良(さくら)が、クラスメートに語ったセリフの1つを紹介します。
「私も君も、1日の価値は一緒だよ」
これは、膵臓の病気でいつ死んでもおかしくない桜良が、「余命わずかな桜良の1日は、自分の1日より尊い」と思っていた「僕」(クラスメートの男子)に言い放った一言です。確かに、すべての人にとって一日一日が大切でかけがえのない限られた時間ですよね。
それと同じだと思います。「トルーマンも篠原元も罪があり、また良いところもある、それは一緒だよ」。こう思えたら、美しいなあと思います。
自分にも罪や悪い過去、隠し通したい部分があるのだから、他者を裁けない。何よりも素晴らしいことは、自分には良いところがあるし、あの人にもある! このように自分自身を認め、他者を認めて、美しい人生を送っていきたいものですね。
素敵な1日をお過ごしください!
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【書籍紹介】
篠原元著『100人の聖書』
本書を推薦します!
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