アメリカの実業家であり「鋼鉄王」と呼ばれ、大成功を収めたアンドリュー・カーネギー(1835~1919)。世界史上を代表する富豪でもあり、ただ単なる大金持ちだったわけでなく、慈善活動家として多くの功績を残しました。アメリカやイギリスを中心に数多くの図書館を設置し、また大学を創設するなど篤志家(とくしか)として活躍しました。
そのカーネギーがこう語っています。「主イエス・キリストは、『汝ら、兄弟たちのために働け』と教えたが、その心を忘れなければ、富める者がその富と自己の頭脳を使って、貧しい兄弟たちのために働く方法はいくらでもある」(『100人の聖書』91ページ参照)
このカーネギーの言葉は、私たちにも当てはまるのではないでしょうか。私たち人間は、誰しもが少なからず「富める者」であると思うわけです。
石村拓一という男を知っています。彼は、貧しい家で育ちます。父は早くに事故で亡くなり、母は遠くの街へ出掛けて手に職を持つため頑張っています。祖父母に育てられ、学歴もなく、お金もありません。一緒に住んでいた祖父母や最愛の姉妹は、突然の自然災害で死んでしまいます。自分が育った家も災害ゆえに全壊し、祖父母たちと頑張って耕してきた農地も一瞬にしてダメになってしまいます。それでも、石村拓一は諦めずに立ち上がります。(これは、三浦綾子の小説『泥流地帯』のストーリーです。石村拓一はこの小説の登場人物です)
皆さんは、拓一よりは富んでいる、または幸せな環境にいるのではないでしょうか。誰と比べるかで変わるとは思いますが。
日本を代表する大企業の社長方や世界の大富豪の方々と比べると「私なんか・・・」ということになりそうですが、この小説の中の拓一や、また現実に今も貧しさの中で生きている世界中の人々を思えばどうでしょうか。1分間に17人、そして1日に約2万5千人もの人が飢えのために命を失っているということを、最近教えていただきました。
スマホがあり、タブレットがあり、パソコンがあります。それだけでも「富める者」ではないでしょうか。そして、「富める者」として、カーネギーが言うように、誰かのために何かができればいいですね。
7月に神宮に行ってきました。「神宮」と書いていますが、明治神宮に行ってきたわけでなく、明治神宮球場のことを言っていますのでご安心ください。カンカン照りの太陽の下で、暑い中、高校球児たちの試合を観戦してきました。応援すべきチームの試合でした。
でも、そこで感動したのは、暑い神宮の中で見た生徒のお母さん方の姿でした。生徒のお母さん方が、神宮の中を歩き回っていたのです。ただ単に、試合中に球場内をペチャクチャ話しながら歩き回っていたなら「何やってんの?」そのものですが、そうではありませんでした。
猛暑の中、観戦(応援)している観客たちのところに行き、「応援ありがとうございます。飲んでください」と言いながら、スポーツドリンクを配って球場内を行ったり来たりしていたのです。2階席まで行ってスポーツドリンクを丁寧に手渡すその姿に感動しました。
お金を取るわけでなく、逆にお礼を言いながら配っていたのです。渡される人は最初ビックリしますが(こんなこと滅多にありませんから)、感謝しながら受け取っていました。
感動して、写真も撮ってきました。これが、7月10日に明治神宮球場で猛暑の中、明治大学付属中野高等学校の生徒のお母さん方が観戦客に配っていたスポーツドリンクです。
お母さん方の「富める者」としての行いは、ペットボトルを球場内の人々に渡すことであり、また、応援する生徒たちに飲料を配ったり、タオルを配ったり、ゴミを回収したりと動く姿でした。
仕事を辞めて遠い外国の子どもたちのためにボランティアに出掛けることだけが「富める者」の姿だとは思いません。あのお母さん方のように、近くにいる生徒のために、そして観客たちのために動くことこそ、「富める者」の姿だと思います。
今の仕事、この生活を続けながら、だからこそ縁のある人や、同僚や部下に何かしてあげる。彼らの助けになることを。疲れているようなら声を掛け、生活がきつそうなら無言で何か渡してあげる。風邪を引いているようなら、コンビニで安い栄養ドリンクを買ってきて、手渡してあげる。「富める者」としてのこの行為が、相手に与える影響、慰め、励ましは多大です。
今日から「富める者」として、近くにいる部下、同僚、上司に、何かしてあげましょう! 皆さんは、「富める者」ですから。
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【書籍紹介】
篠原元著『100人の聖書』
本書を推薦します!
「他の追随を許さない数と挿話」
――奥山実牧師(宣教師訓練センター[MTC]所長)
「牧師の説教などに引用できて便利」
――中野雄一郎牧師(マウント・オリーブ・ミニストリーズ)
「聖書に生きた偉人たちの画廊」
――峯野龍弘牧師(ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会)
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