日本銀行総裁、日商岩井株式会社社長、経済同友会代表幹事、東京女子大学理事長、聖学院名誉理事長、そして経済企画庁参与。これらの要職を歴任した人物、それが速水優という人です。時の総理大臣橋本龍太郎から指名され、第28代日銀総裁に就任しました。そして、重要なことは彼がクリスチャンであったという事実です。
クリスチャンであった速水優が、このように語っています。「『恐れるな、わたしはあなたと共におる』・・・に励まされました。私は『主共にいます』『主われを愛す』『主すべてを知りたもう』という三つのことを心の中に入れて・・・」(『100人の聖書』86ページ参照)
この速水優の言葉に、キリストの神様という存在がどのような方なのかが表れているのです。今日は、キリストの神様はどんなお方なのかをご説明します。
よく手にとっている『泥流地帯』(三浦綾子著)という作品があります。この作品の主な登場人物は3人(あくまで私なりの意見です。実際は4人と言うべきです)。節子、拓一、福子(小菊)です。節子の生家の事情、生い立ち、熱い生きざまも、いつか特筆すべきですが、今日はあえて触れません。
今日触れたいのは、拓一と福子(小菊)の関係です。拓一は下級生であった福子をずっと想い、愛しています。そして、福子の現状、今までの苦しみをよく(ほぼすべて)分かっています。
でも、福子と一緒にいることはできません。福子も拓一と共にいることができません。なぜならば、拓一が、ほぼすべてを知りながらも、想い続け、愛し続けている福子は、親の借金ゆえに市街の店に売られてしまい、毎晩苦しみの毎日を過ごしているからです。
山の中に住む拓一が福子を想っているときに、当の福子は「小菊」と呼ばれ、市街にある、そういう店で男たちの相手をさせられ、死ぬほどつらい目にあっています。
学校に通っていた頃から大好きだった年下の女の子が、家の事情で市街のそのような店に売られてしまい、毎晩、他の男たちに弄(もてあそ)ばれている。それを分かっていても彼女を愛し続け、彼女を自由にしてあげたいと、お金を貯める拓一のすごさが、男性の方にはよく分かると思います。
では、最後に拓一ではなくて、キリストの神様について書かせていただきます。まず、キリストの神様というお方は、日銀総裁を務めた速水優が言っているように、「主われを愛す」という方です。つまり、これは拓一が福子を愛していたのと同じですが、キリストの神様は人間を裁き、祟(たた)ったり、不幸にあわせることを第一に願うようなお方でなく、愛する方なのです。まず一番目、人間を愛するお方です。
次に、キリストの神様は、速水優が言っているように「主すべてを知りたもう」というべき方です。つまり、これは拓一が福子の事情を知って、理解していたのと同じですが、キリストの神は皆さんのことをよく分かり、理解してくれているお方ということです。皆さんの考え、苦しみ、そして皆さんが遭遇してきた不幸、今抱えている問題や人に言えない部分も、全部知っておられます。
一番目と二番目を合わすと、つまりこうなります。皆さんの抱えている問題、苦しみ、人に言えない部分をご存じで、それを理解した上で、それでも皆さんを愛してくれる方なのです、キリストの神は。拓一が福子の事情、体を売らされているという悲しい事実を知りながらも、それでも福子を想い続け、愛し続けたのと同じです。
そして最後、三番目。これは拓一にはできなかったことですが、キリストの神様にはできることです。キリストの神様は、速水優が言っているように「主共にいます」といえる方です。キリストの神様は目に見えません。寺や神社にあるようなものと違い、目に見ないのがキリストの神様の特徴です。
だからこそ、ありがたいことに、どこにでもいることができるわけです。目に見える物や存在は、目に見えるので、それゆえにそこにあるだけです。でも、目に見えなくて、物体とはまったく違うキリストの神様は、どこにでもいることができるわけです。
キリストの神様は、皆さんの抱える問題、人に言えない暗い部分を知って、分かっている上で、それでも皆さんを愛してくださり、皆さんが求めるならいつでも一緒にいてくれる方なんです。
「こんな所でも・・・!?」と思う場所でも、「死にたい・・・!」と思う時間にも、皆さんと一緒にいてくれるのです。泣きたい、悲しい、つらすぎる状況のあなたと一緒に。
安心です。裁かれる・祟られる・不幸な目にあわされるというようなことを心配しないでいいのですから。そんな神々ではないのです。皆さんのことをすべて知った上で、皆さんのことを愛してくれて、そして一緒にいてくれるのです。
最後に、キリストの神様の言葉です。聖書イザヤ43章5節から皆さんに贈ります。「恐れることはないよ。わたしがあなたとともにいるから」
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