2015年2月に北アフリカのリビアでエジプト人コプト教徒ら21人が、過激派組織「イスラム国」(IS)傘下の組織に斬首された事件で、エジプトの裁判所は16日、事件やISと関わりがあるとして7人に死刑判決を下した。
AFP通信(英語)によると、7人はエジプト北部マルサマトルーフで活動するIS傘下の組織のメンバーで、リビアとシリアで軍事訓練を受けた後、襲撃を計画。人数は明らかにされていないが、7人のうち何人かがコプト教徒21人の斬首を実際に行ったとされている。
3人は欠席裁判で死刑宣告を受けており、7人の判決は今後、エジプトのイスラム教法学者によって再審理される。また、同じ訴えで裁判にかけられている他の13人は、11月25日に判決が下される予定だ。
エジプト北東部北シナイ県で活動するIS系組織は、イスラム教徒のモハメド・モルシ元大統領が2013年の軍事クーデターで追放された後、テロ活動を開始した。
15年2月に公開された動画には、キリスト教の一派であるコプト正教の信徒21人を斬首する様子が映し出されており、「血で署名された十字架の国へのメッセージ」と題されていた。動画は、ジハード主義者たちのおぞましい行為を示すものだったが、信仰を捨てることなく殉教することを選んだ21人の姿は、イスラム教徒が多数派のエジプトで少数派であるコプト教徒たちをかえって力づけることになった。
迫害監視団体「国際キリスト教コンサーン」(ICC)が今年2月に行った殉教2周年記念の報告(英語)によると、殉教した21人の遺族は、亡くなった愛する者たちに対して深い敬意を払っている。
事件で夫を失った女性は、「(夫は)信仰を守り、キリストの名によって殉教しました。私は、信仰がとても強かった夫を誇りに思います。彼は私たちの顔を上げさせてくれました。私たちだけでなく、すべてのクリスチャンに栄誉をもたらしました」と語った。殉教者の子どもたちもまた、自身の父親が世界に示した勇気を「誇りに思っている」と言う。
エジプトの多くのコプト教徒は、死ぬことさえもあり得る厳しい迫害に直面することを知りつつも、仕事を探して隣国のリビアに渡る。あるコプト教徒は、英サンデー・タイムズ紙に次のように語っている。
「リビアでは、生きる可能性よりも死ぬ可能性が高いことを知っていますが、私たちには選択肢がありません。エジプトの経済危機のために、リビアに行く人々はますます増えています。エジプトでは仕事を得ることができず、お金を稼ぐことができません。私たちは危険、特にキリスト教徒としての危険をよく知っています」
リビア赤新月社によると、今年7月にはリビアの荒野で、少なくとも22人のエジプト人移住者が、高温と飢えのため亡くなっているのが見つかった。
リビアの情報機関の報告によると、北西部の都市バニワリードの南にある渓谷と砂漠地帯でISの戦闘員約700人が再編成しており、アルカイダを含む他の過激派グループの戦闘員3千人が同国内で活動しているとみられている。