6年前の大地震で大きな被害を受けたニュージーランドのクライストチャーチ大聖堂(聖公会)の再建が決まった。同大聖堂をめぐっては、教会側が崩壊した大聖堂を解体し、新築する計画を打ち出していたが、市民団体などが反対。議論が続いていたが、被害を受けた建物を修復して再建することで決着がついた。
2011年2月22日正午過ぎ、ニュージーランドの南島東部のカンタベリー地方をマグニチュード6・3の地震が襲った。同地方最大の都市であるクライストチャーチでは、大規模な液状化現象が発生し、一部のビルが崩壊するなどした。この地震により計185人の命が奪われた。19世紀後半に建てられた新ゴシック建築のクライストチャーチ大聖堂は、60メートル以上ある尖塔が崩壊するなど、大きく損傷した。
教会側は12年3月、大聖堂を解体して新築し、再出発することを発表した。その際、壊れた大聖堂を修復して再建する場合、費用が1億ニュージーランドドル(約82億円)余りと法外な金額を要することを理由として挙げていた。しかし、複数の文化遺産保護団体はこれまで、大聖堂がクライストチャーチの歴史上、欠かせない重要な建築物だとして、解体を阻止する訴訟を起こすなどしていた。
大聖堂の保存を求めていた市民団体「クライストチャーチ大聖堂再建計画」のマーク・ベルトン共同議長はAFP通信に対し、「人々はこの決定に大喜びしています」「私たちの観点から、正気が取り戻されてきました」と語った。ベルトン氏は、大聖堂の解体は「この街から心を剥ぎ取る」ことになるだろうと述べ、今回の決定は「傷の癒やしになるだろう」と語った。
「ヘリテージ・ニュージーランド」のクレア・クレイグ氏は、「(大聖堂の再建は)都市の再開発の重要な節目です。2010年と11年の地震によって非常に多くの遺産が失われましたので、この街の復興の決定的な転機となる再建作業は、地元住民と観光客の両者から歓迎されるでしょう」と述べた。
修復作業は今年中に開始される予定で、教会側は再建に最大で10年かかるとみている。