日本で唯一の聖書専門図書館として親しまれてきた東京・銀座の聖書図書館が、6月30日をもって閉館した。貴重な資料の多くが、2020年以降に新しく開館する青山学院大学の図書館(東京都港区)に寄贈される。
聖書図書館は、日本聖書協会が1980年3月に開館した。古今東西の535言語、5300冊を超える聖書を所蔵し、特に日本語訳聖書は、現存する最古のものから現代訳まで網羅している。その他、辞典や注解書、研究書など、数多くの聖書関連文献がそろっている。
中でも、「死海写本」(紀元前2世紀)の羊皮紙複製や、聖書が広く普及するきっかけとなった『42行聖書』(15世紀、グーテンベルクが活版印刷技術を用いて印刷した西洋初の印刷聖書)のファクシミリ版など、貴重な資料が充実している。
37年間、聖書研究や翻訳のために利用され、聖書研究者はもとより、一般の人も自由に閲覧できただけに、その閉館には多くの惜しむ声が聞かれる。
今回の閉館の理由について、同図書館の高橋祐子さんは次のように答えた。
「青山学院大学では2020年以降に新図書館建設計画があり、その新設される図書館の一角に聖書図書館の蔵書を移設するため、6月末に閉館しました。その準備と、閉館後に聖書展示室を作るため、この時期の閉館となりました」
また今後、貴重なコレクションの数々は「元日本聖書協会所蔵聖書」として、青山学院大学の新図書館でまとまった形で公開される予定だという。
「キリスト教主義大学における多くの教師、学生の方々によって、これまで以上に聖書の研究と学びがなされることを希望しています。新設図書館は日本一の大学図書館を目指しているとうかがっており、聖書の保管と保存にも十分な管理がなされると思います。また、豊富な予算によって聖書の蒐集(しゅうしゅう)が継続してなされ、ますます充実したコレクションに成長していくことを希望しています」
聖書図書館は閉館後、「聖書展示室」に形を変え、聖書翻訳の歴史に関する展示がされることになる。「聖書展示室には、1837年発行のギュツラフ訳『約翰(ヨハネ)福音之傳』、1617年の『ジェームズ王欽定訳英語聖書』などを展示し、聖書の歴史や翻訳の歴史を分かりやすく説明し、より親しみやすい場所になるよう計画しています」と高橋さん。
なお、移動された資料は、青山学院大学の新図書館完成まで、相模原キャンパス内の万代記念図書館地下自動書庫に置かれ、公開されることになる。