14日午前1時(日本時間同午前9時)ごろ、ロンドン西部にある公営の高層住宅で発生した大火災から数時間後、現場付近にある聖クレメント教会(英国国教会)は、瞬く間に緊急救援センターに様変わりした。火災の激しさが増すにつれ、同教会には100人余りの住民が避難し、救援物資が続々と寄せられた。地域の人々は、被災した高層住宅の住人のために衣服や寝具、トイレ用品などを持ち寄った。避難した人の多くは、パジャマ姿で現場から避難しており、何もかも失ってしまった。救援活動は、地元の諸教会のボランティアたちが率先して行っている。
アラン・エベレット牧師は、壊滅的な火災から数時間のうちに、事態がどのように展開したかを説明した。「私は午前3時半に教会を開けたのですが、数分後には地元の住民たちが救援物資を持ち込み始めました。どのテーブルも救援物資であふれました。すさまじい勢いで物資が持ち込まれました」。聖クレメント教会は物資でいっぱいになり、部屋が足らずに、もはや救援物資を保管できなくなるほどになった。
エベレット牧師によると、聖クレメント教会は地域住民への伝道活動に常に重きを置いてきたため、この悲劇的な出来事が人々に固い絆をもたらしたという。
「長年にわたって地域伝道をしてきましたので、この教会には高い信頼が寄せられています。あらゆる宗教の人から信頼されているのです。このような反応は、社会的な福音です。悲劇に見舞われた人々は、神はどこにいるのかと疑うかもしれません。しかし、神は助けを差し伸べている人々の中におられるのです」
火災があったケンジントンの大司祭のマーク・オドノギュウー牧師も、14日早朝から聖クレメント教会に駆け付けた。「私は、友人や親戚を必死に探す人たちのそばに腰掛け、ずっと話を聞ていました。この教会はキリストのような同情と心遣いを表しています」。隣接する教区から来たジェームス・ハード牧師は、被害に遭った人々と祈りながら時を過ごした。「私は昨日の大半をここで過ごしました。やって来る人たちは、ショックのために話すこともままならない状態です」
教会の敷地内には祈りのスペースが設けられており、地域の聖職者が悲しむ近親者らを支援できるようになっている。また聖クレメント教会では、行方不明者の登録もできる。
現場はさまざまな国籍の人たちが住む、極めて多文化的な地域だ。モロッコ人、フィリピン人、東欧人、またエチオピアやエリトリア、ソマリア出身の人々が多く集まっている。
カンタベリー大司教ジャスティン・ウェルビーは、地域住民による応答は「並々ならぬ光景」だったと述べた。ケンジントンのグレアム・トムリン主教は、聖職者が先頭に立つことは重要なことだと語った。
「教会の扉と共に、心も開いてできる限り支援することが重要です。この教会は災害のあった地域の中心にあるため、ここには親戚に関する知らせを心待ちにする家族の人たちが集っています。5歳の息子が見つかっていないエチオピアの家族がいます。高層住宅の周辺では多くのフィリピン人が行方不明になっているため、地元のフィリピン人牧師が熱心に関わっています」
聖クレメント教会は、高層住宅の一角から徒歩4分の所にある。