人は誰もが、1度きりの人生を、幸せな生きがいのある、意味深いものとして生きたいと願います。しかし、私たちがいくら努力するとしても、まことの喜びと幸せを得ることはできません。ただイエス・キリストが下さる聖なる夢と使命を果たしていくときにこそ、幸せで意味ある人生を送ることができます。
イエス様の一番弟子だったペテロは、劇的な人生を送った人でした。イエス様の一番近くで忠実に仕えていた者でしたが、その反面、イエス様を3度も知らないと否定したりもしました。
ところが、復活されたイエス様はペテロを再び訪ねて行って、彼に使命を与えられました。罪の赦(ゆる)しの恵みを受けたペテロはマルコの屋根裏部屋で聖霊を受け、十字架において死ぬほどにまで信仰を守った主の忠実なるしもべとなって、自分を再び招いてくださったイエス様の恵みに応えました。召命にふさわしい実を結ぶのは、恵みを受けた者の当然の道理です。
苦しみの中でも信仰を守りなさい
イエス様に3年間も同行したペテロは、イエス様こそ神様が送られたユダヤ人の王、すなわちローマの圧政からイスラエルを解放してくれる政治的メシヤであると考えました。しかし、このようなペテロの信仰は、神様をユダヤ人の神様として独占しようという誤った信仰から生まれたものでした。彼の信仰は、全人類のための神様の救いの計画からは程遠いものでした。
イエス様がこの世の王ではなく、苦しみを受ける神様のしもべとして十字架において死なれるという事実は、ペテロとしては考えることもできないことでした。それでペテロは、イエス様が自分はもうすぐ苦しみを受け、すべての人々が私を捨てて去っていくだろうと受難予告をされたときも、それがどういう御言葉なのかよく分からず、自分だけは決してイエス様を見捨てないと言いました。
「すると、ペテロがイエスに答えて言った。『たとい全部の者があなたのゆえにつまずいても、私は決してつまずきません』」(マタイ26:33)
そして、それにとどまらず、主と共に死ぬことはあっても、イエス様を知らないと言うことは絶対にないだろうと大口を叩きました。
「ペテロは言った。『たとい、ごいっしょに死ななければならないとしても、私は、あなたを知らないなどとは決して申しません。』弟子たちはみなそう言った」(マタイ26:35)
しかし、ペテロはイエス様が苦しみを受けるしもべとなるために逮捕されると、その後を追いかけて行って、大祭司カヤパの庭にてイエス様を3度も知らないと否定しました。最後の3番目の質問に対しては、自身の潔白を主張するためにイエス様に向けられた呪いの誓いをためらわずに行い、イエス様を知らないと言いました。
ペテロのこの告白は、単純に恐怖にかられて行ったものではありませんでした。イエス様のメシヤとしての働きが失敗に終わるだろうという考えから出て来たものでした。
「すると彼は、『そんな人は知らない』と言って、のろいをかけて誓い始めた。するとすぐに、鶏が鳴いた」(マタイ26:74)
ところが、その瞬間、鶏の鳴き声が聞こえ、イエス様が捕らえられる前に自分に話された御言葉を思い出しました。彼は慟哭(どうこく)しました。
「そこでペテロは、『鷄が鳴く前に三度、あなたは、わたしを知らないと言います』とイエスの言われたあのことばを思い出した。そうして、彼は出て行って、激しく泣いた」(マタイ26:75)
私たちはイエス様を信じると告白はしますが、生きていくときに時々イエス様を裏切ることがあります。私たちの利益のためにどれほど簡単にイエス様の御名を使い古しの靴みたいに投げ捨てていることでしょうか。
キリスト者であるけれども、社会に出たらキリスト者でないかのように生きている人々もどれほど多いか、数え切れないほどです。何ともないように罪を犯して不義を行うことも、やはりイエス様を裏切る行為です。
しかし、召命にふさわしい実を結ぶには、どんな状況においてもイエス様を裏切ってはなりません。かえってつらく苦しい時こそ、神様の子どもとして信仰を守りつつ、信仰にふさわしい実を結ばなければなりません。
(イ・ヨンフン著『まことの喜び』より)
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【書籍紹介】
李永勲(イ・ヨンフン)著『まことの喜び』 2015年5月23日発行 定価1500円+税
苦難の中でも喜べ 思い煩いはこの世に属することである
イエス様は十字架を背負っていくその瞬間も喜んでおられました。肉が裂ける苦しみと死を前にしても、淡々とそれを受け入れ、後悔されませんでした。私たちをあまりにも愛しておられたからです。喜びの霊性とは、そんなイエス様に従っていくことです。イエス様だけで喜び、イエス様だけで満足することを知る霊性です。神様はイエス様のことを指し、神の御旨に従う息子という意味を込めて「これは、わたしの愛する子」(マタイ3:17)と呼びました。すなわち、ただ主お一人だけで喜ぶ人生の姿勢こそが、神の民がこの世で勝利できる秘訣だということです。
(イ・ヨンフン著『まことの喜び』プロローグより)
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